筋トレと乳酸の関係性を正しく理解してますか?【筋肉痛の原因ではありません】

こんにちは、筋トレ栄養マニアのかしろ(@kashiro_kona)です。

筋トレをすると乳酸が発生して、それが筋肉痛の原因になるって聞いたんだけど本当かな?

そんな疑問をお持ちの方は、ぜひこの記事を読んでください。

実は、乳酸は筋肉痛の直接的な原因ではありません

ただし、乳酸がたまることによって筋肉が動かなくなるのは本当です。

以下より、そんな筋トレと乳酸の関係について解説していきます。

この記事を読めば分かるようになるのは下記の3点です。

  • 乳酸が筋肉痛の直接的な原因ではない理由
  • 乳酸が溜まると筋肉内で起こる変化について
  • 乳酸が溜まる筋トレ=化学的刺激を狙った種目

乳酸のことを知れば、もっと効率的に筋肥大を起こすことができるようになりますよ。

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筋トレと乳酸の関係性を正しく理解してますか?

筋トレと乳酸における一番多い勘違いが「乳酸は筋肉痛の原因である」というものですね。

最近の研究においては、乳酸が筋肉痛の直接的な原因ではないと言われています。

その理由を説明するためにはまず、なぜ筋肉を動かすと乳酸が発生するのかという仕組みの部分から説明していきます。

筋肉を動かすにはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが必要となるのですが、ATPは下記の3つの経路から生成されます。

  • 解糖系
  • ATP-CP系
  • 酸化的リン酸化

この内、筋トレのような無酸素運動では主に解糖系ATP-CP系の2つの経路が働くのですが、メインとなるのは解糖系です。

解糖系とはその名の通り、糖質(グルコース)を分解することによってATPを生成する仕組みのことを言うのですが、その際にはATPだけではなく、ピルビン酸乳酸も同時に生成されるのです。

つまり乳酸は、筋肉を動かすエネルギーが作られる際に、副次的に生まれるものなのです

つまり筋肉を動かすと必然的に乳酸が生まれるので、このことから「筋肉痛の原因=乳酸」と以前は考えられてきました。

しかしここで、1つの疑問が生まれます。

乳酸は筋トレを行った後すぐに生成されますが、筋肉痛自体は筋トレをした翌日や翌々日に発生することもありますよね?

むしろトレーニングの翌日だと、筋肉内の乳酸は血液によって運ばれて、少なくなっているはずです。

このことからも、現在は乳酸が筋肉痛の直接的な原因であるという説は否定されています

ちなみに筋肉痛が発生するメカニズムについて知りたい方は筋肉痛で筋トレはすべき!?筋肉痛とトレーニングの関係を徹底解説【古い考え方に騙されないで】という記事をご覧ください。

乳酸が溜まると筋トレのパフォーマンスは低下する?

次に、乳酸と筋トレのパフォーマンスについてです。

実は、筋トレをしていて次第に筋肉が動かなくなってくるのには乳酸が関係しているのです。

その原理を解説しましょう。

筋肉が動く(収縮する)にはまず、脳からの命令が下されてスタートします。

筋繊維には筋小胞体という場所があるのですが、脳から「筋肉を動かせ!」という命令が発せられると、この筋小胞体からカルシウムイオンが放出されるのです。

そのカルシウムイオンが筋繊維にあるトロポニンへと結合されることで、筋繊維の収縮が発生します。

逆に筋肉が弛緩するときは、カルシウムポンプによってこのカルシウムイオンが筋小胞体へと戻っていき、逆順を辿って筋肉は弛緩していくのです。

つまり筋肉を動かすにはカルシウムイオンが重要だと覚えておけばOKです。

そして筋肉がエネルギーを消費すると、ピルビン酸や乳酸が生まれるのは先ほども説明した通りです。

実はピルビン「酸」や乳「酸」が多くなると、筋肉のph値は酸性へと傾いていってしまいます

酸性に傾くとどうなるか。

端的にいうと、カルシウムイオンがきちんと働かなくなります

なので改めて筋肉が動かなくなる仕組みを整理しましょう。

①筋肉が糖質(グルコース)を分解してATPを生成する↓

②乳酸とピルビン酸も同時に生成される

③筋肉がだんだんと酸性に傾いていく

④カルシウムイオンが働かなくなる

⑤筋肉が動かなく(収縮しなく)なる

といった流れです。

なのでインターバルを挟むと筋肉が再び動くなるようになるのは、血液によって筋肉内の乳酸が運ばれるからなのです。

ちなみに筋肉が完全に動かなくなる乳酸の量、逆に言えば筋肉が許容できる乳酸の量とはどのくらいかと言うと、およそ筋肉量の3%までと言われています。

たったそれだけの量の乳酸が溜まるだけで、筋肉は動かなくなってしまうのですね。

乳酸は筋肥大にも効果をおよぼします

こう聞くと筋肉にとって乳酸は敵でしかないように感じられますが、必ずしもそうとは限りません。

乳酸は筋肥大に効果的な刺激の1つである、化学的刺激を生み出してくれるのです。

ここで筋肥大に効果をおよぼす、筋トレによって生じる2つの刺激をご紹介します。

  • 機械的刺激:高重量を扱うことで特に筋細胞膜に炎症を与えるような刺激
  • 化学的刺激:酸素濃度や代謝環境の変化により、ホルモンの分泌に影響を与えるような刺激

筋肥大を目的とした筋トレにおいては、このどちらかの刺激を狙って行う事によって、効率良く筋肥大することが可能となります。

そして乳酸やピルビン酸によって筋肉が酸性に傾くというのは、まさしくこの化学的刺激の一種です。

乳酸が溜まるとそれを排出するために大量の血液が筋肉に運ばれてきますが、その際に筋肉にとって必要な栄養素も一緒に流れてきますので、それも筋肥大にとっては非常に効果的にはたらきます。

つまり化学的刺激を狙って言えば「乳酸が溜まるトレーニング=筋肥大に効果的なトレーニング」ともいえるわけなのです。

乳酸が溜まる筋トレ方法とは?

疲れ切った男性

では、化学的刺激を狙う乳酸が最大限溜まる筋トレ方法とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

ポイントは40秒間筋肉の緊張を持続させることです。

乳酸が解糖系によって生成されることは先ほども説明した通りです。

そして解糖系は筋肉内に貯蔵されたグリコーゲンを用いて行われるのですが、筋肉内に貯蔵出来るグリコーゲンの量には限界があるので、当然解糖系にも限界持続時間というものが存在します。

そして、その解糖系の持続時間というのが約40秒であると言われているのです。

なので理論上、1セットで生成できる乳酸の量は、40秒ギリギリまで筋肉の緊張を持続させることによって最大化されるのです。

この理屈を利用した上で、最大限の化学的刺激を狙えるセットの組み方をご紹介しましょう。

スクワットを例に取って解説します。

前提条件として、

  • 重量は1RM(ギリギリ一回持ちあがる重さ)の70%
  • ノンロック(体を持ちあげる際に膝を伸ばし切らない)で行う

とします。

1RMの70%で行う理由というのは、今回紹介する組み方では1セットごとの回数はそれほど多くないので、ぎりぎり持ちあがる重量を選択すると、1RMの70%程度になるからです。

そしてノンロック状態で行う理由としては、セット内での筋肉の緊張を持続させるためです。

以上を踏まえて、実施方法をご説明します。

①スクワットを「4秒」かけて降ろし「3秒」かけて挙げる(ノンロックで)

②これを6レップ繰り返す

③5秒程度のインターバルを挟む

④同じく4秒かけて降ろし、3秒かけて挙げる

⑤今度は4レップ繰り返す

⑥5秒程度のインターバルを挟む

⑥今度は2~3レップ繰り返す

⑦5秒程度のインターバルを挟む

⑧②から合わせて合計「30レップ」になるまで⑥⑦を繰り返す

以上となります。

やってみれば分かりますが、これはめちゃくちゃキツいので、覚悟を持って実施するようにしてください。

というわけで、このセットの組み方の理由を解説します。

まず最初の「4秒かけて降ろし、3秒かけて挙げるを6レップ繰り返す」理由としては、先ほどの解糖系がはたらく限界時間である40秒が関係してきます。

4秒かけて降ろし、3秒かけて挙げるを行うと、1レップあたりにかかる時間は約40秒となります。

理論上は、これで筋肉は動かなくなるわけです。

しかし、5秒のインターバルを挟むことによって、血液が筋肉に運ばれて、乳酸の一部が筋肉の外に運び出されます。

すると再び筋肉に余力が生まれるのです。

そうすると、次のセットでも4回くらいはギリギリ挙がるようになっているはずです。

そしてさらにインターバルを挟むとまた乳酸が外に運び出されて回復し、2~3回は挙がるようになって。。。

といった理屈になります。

目安としては30レップを目標にした方が良いですが、筋肉の量によって限界回数には個人差がありますので、基本的には全く挙がらなくなるまでは1回でもいいので繰り返すようにしましょう。

さいごに

以上が知ってるようで知らない、筋トレと乳酸についての解説でした。

乳酸を単なる疲労物質の1つとして捉えるのではなく、筋肥大を起こすための刺激物質として捉えると、また違った筋トレのやり方が見えてきますね。

もちろん、今回あまりご紹介しませんでした、高重量×低回数で機械的刺激を狙う筋トレ方法というのも、また違った違った効果が得られるのでオススメです。

その日の気分やマンネリ防止を兼ねて、効果的に選択できるように知識を身に着けていきましょう。

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