「筋トレをすると血圧が上がるから、高血圧の人は筋トレをしない方がいいのかな?」
そんな疑問に対してこの記事ではお答えしていきます。
実は、筋トレは高血圧を改善する効果があることが最近の研究では分かってきています。
ただ、高血圧の人が筋トレを行うと、労作性頭痛を引き起こす場合もありますので、今回は高血圧の原因と改善方法も含めてご紹介します。
この記事のポイントは以下の3点です。
- 筋トレを行うと高血圧は改善する
- 正しく栄養を摂取すると高血圧は改善する
- ”塩分”は高血圧の原因ではない
正しく栄養を摂取しているマッチョは、むしろ高血圧になりにくいことが分かりますよ。
以下より、詳しく解説していきます。
筋トレは血圧を改善します
一般的には筋トレを行うと血圧が高くなるイメージが強いのですが、実はその認識は間違いです。
ブラジルで行われたこちらのメタ分析では、レジスタンストレーニング(いわゆる筋トレ)が、血管の収縮時血圧・拡張時血圧の両方を下げる効果があると結論付けられています。
しかもその効果なのですが、イギリスのロンドン大学の教授らが行ったこちらの研究によると、筋トレを行うと血圧降下剤を使用するのと同じくらいの血圧改善作用が期待できるとのことです。
また、長期にわたって筋トレを行い筋肉がつけば、その筋肉が血液を送りだすポンプとしての役割を担うようになるので、心臓への負担も低下します。
さらに筋肉が増えると代謝もよくなりますので、肥満による高血圧の改善にもつながるのです。
こう書くと、筋トレがいかに健康にとって有益かが分かりますよね。
ちなみに血圧の改善に特に効果的な筋トレのやり方も、後半でご紹介します。
血圧を改善する栄養の摂り方
ただ、冒頭でもご説明した通り、すでに高血圧の人が筋トレを行うと労作性頭痛を引き起こす場合があります。
これは筋トレを行うと一時的に血流が促進されてしまうので、それにともなって神経が圧迫されて引き起こされる頭痛になります。
なので労作性頭痛を防ぐ為にも、栄養面から血圧を改善していく必要があるのです。
その際にも、実は筋トレーニーとしての栄養知識が活かされてきます。
なのでここからは筋トレーニー的目線で、血圧を改善するための栄養素を4つ紹介していきます。
筋トレーニー式血圧を改善する栄養素①:プロテイン
プロテインは筋肉をつけるだけではなく、血圧を改善するのにも役立つのです。
よく勘違いされがちなのですが、プロテインは別に筋肉増強効果のあるサプリメントでもなんでもなく、ただのタンパク質を効率的に摂取することが出来るサプリメントに過ぎません。
ちなみにプロテインを日本語になおすと「タンパク質」となります。
それでも筋肉をつけるためにプロテインが重要と言われているのはなぜかと言うと、プロテイン=タンパク質が筋肉をつくるための材料となるからなのです。
そしてタンパク質が材料となるのは筋肉だけではありません。
髪の毛や骨、肌、内臓に至るまで、体のありとあらゆるものの材料となるのがタンパク質なのです。
血圧に関わる血管の材料ももちろんタンパク質です。
血流が多少早くなったとしても、正常な血管であればその弾力性によって血管に加わる圧力を吸収してくれます。
ですが、その血管が弱くなっていると、血圧に耐え切れなくなって破れてしまったりするわけですね。
なのでプロテインは直接血圧の改善をするというよりは、血圧による健康被害を防止してくれる栄養素と言えます。
ちなみに、1日あたりに必要なタンパク質の量は、体重1kgあたり1g以上と言われています。
体重60kgの人だと、サラダチキンに換算すると3つ分ですね。
しかもこれはあくまでも必要最低限の量なので、きちんとタンパク質を補充するためには、プロテインを効果的に利用する事が重要なのです。
筋トレーニー式血圧を改善する栄養素②:カルシウム&マグネシウム
血管を含め、筋肉を動かす(収縮させる)のに必要な栄養素をご存知でしょうか?
実はその栄養素こそが、カルシウムとマグネシウムなのです。
筋肉が脳に「動け!」と命令されたとき、まずは筋細胞にある筋小胞体からカルシウムイオンという物質が放出されます。
そしてそのカルシウムイオンの放出をきっかけとして、筋肉の収縮が開始されるのですが、そのままでは筋肉がずっと収縮しっぱなしになってしまいますよね。
なので収縮した筋肉を戻すためにはカルシウムポンプという機能が働き、放出したカルシウムイオンを筋小胞体の中に戻す動きをします。
するとカルシウムイオンがなくなったことをきっかけとして、筋肉が今度は弛緩するというわけです。
このカルシウムイオンの材料となるのがカルシウムであり、カルシウムポンプがはたらく際に使われるのがマグネシウムなのです。
なのでカルシウムが不足すると筋肉が上手く働かなくなり、筋力の低下を招きます。
そしてマグネシウムが不足すると収縮した筋肉が上手く戻らなくなるので、肉離れや痙攣といった症状を引き起こします。
もちろん、これは血管でも同じです。
血管が拡張したり収縮したりする際にもカルシウムとマグネシウムが必要となるので、この2つが不足していると血管がうまく働いてくれません。
なので高血圧の改善にはカルシウムとマグネシウムをきちんと摂取することも大切なのです。
ちなみにカルシウムとマグネシウムの摂取量の目安はそれぞれ下記のようになります。
- カルシウム:1000mg/1日
- マグネシウム:(男性)400mg/1日、(女性)300mg/1日
加えて重要なのがカルシウムとマグネシウムのバランスです。
このバランスは「カルシウム:マグネシウム=2:1」となるように意識しましょう。
ただし、プロテインにはカルシウムが多く含まれている場合も多いので、筋トレーニーの方はサプリメントからはマグネシウムだけを摂取しておけば十分です。
筋トレーニー式血圧を改善する栄養素③:EPA&DHA
次がフィッシュオイルとしても有名なEPA&DHAです。
EPAには脂肪燃焼効果や、筋合成を高める効果があることは、筋トレーニーにはもはや常識レベルの事実ですね。
それに加えて、EPAには血液の粘度を下げる(さらさらにする)作用があることも知られています。
血液の粘度が高いとその分血流が促進されることが知られていますので、EPAを摂取することでも血圧の改善が見込めます。
EPA&DHAは1日に2g~3g程度摂取すると良いとされていますので、下記の商品を1日4カプセル、朝晩2回に分けて飲むと良いです。
筋トレーニー式血圧を改善する栄養素④:カリウム
このあと詳しく解説しますが、実は高血圧の原因は塩分の過剰摂取ではなく、カリウムが不足していることが原因となります。
実際、カリウムを適切量摂取することで血圧が下がったというアメリカの研究と、スイスで行われた研究というのも存在しています。
その理由については後ほど解説しますが、ここではカリウムの摂取方法と、どのくらいの量が必要なのかをご説明します。
カリウムはWHO(世界保健機構)の基準によると、3510mg/1日を摂取する必要があります。
日本人の一般的な食生活では2500mg程度しか摂取出来ていないと言われているので、+1000mgほどを追加で摂取しないといけません。
カリウムが多く含まれているのは、イモ類、海藻類、切り干し大根、リンゴなどがあります。
そのなかでもイモは食物繊維が豊富で、GI値も高く太りにくい糖質の1つなので、特におすすめですよ。
塩分は高血圧の原因ではない
一般的には、高血圧の原因は塩分の摂り過ぎであるとされていますが、実はそれは誤りなのです。
では何故塩分=高血圧だと考えられて来たのでしょうか。
塩分を多く摂るとその分体液は濃くなります。
それを薄めるためには当然、体液を増やす必要があり、体は水分を欲するようになります。
塩っ気の多いものを食べるとのどが渇くのはこれが原因なのです。
そして水を飲んで体液が増えると、今度はその多くの液体を運ぶために心臓は圧力を強める必要があり、血圧が高くなるという流れになります。
ですが実際のところ、減塩を行っても血圧が改善されないことが、デンマークで行われた研究によっても分かってきています。
それどころかCDC(アメリカ疾病管理予防センター)が発表したメタ分析によると、ナトリウムの摂取量を1日1500mg~2300mg以下(食塩換算3.8g~5.8g)にすると、かえって死亡率が高くなったという結果を発表しています。
それは、ナトリウム(塩分)が体にとって極めて重要なはたらきを担っているからです。
ナトリウム(塩分)の重要なはたらき【ナトリウムポンプ】
体のはたらきには神経間の情報伝達が必要となってきます。
そしてその情報伝達を担っているのが、ナトリウムポンプ(ナトリウムーカリウムポンプ)なのです。
ナトリウムポンプのはたらきとは、ナトリウムイオン3個を細胞外に運び出し、カリウムイオン2個を細胞内に運び入れることです。
それによって活動電位が生じ、情報が伝達されていくのです。
他にもナトリウムポンプによって小腸から栄養が吸収されたり、細胞の浸透圧が調整されたり、神経の興奮伝達の際にも使われることが知られています。
なのでナトリウムが不足すると、
- 情報の伝達が上手くいかなくなる
- 細胞が破裂する
- 栄養が吸収されなくなる
- 神経が興奮されず、無気力になる
といった症状を引き起こしかねません。
しかも体内でナトリウムが不足すると、体は骨を分解してナトリウムを取り出そうとします。
なので塩分を控えた食生活をしていると、骨が段々と脆くなってしまうのです。
他にも食欲を減衰させたり、体を酸性に傾けたりと、悪いところを挙げれば枚挙にいとまがありません。
大切なのはナトリウムとカリウムのバランス
ナトリウムポンプを働かせるためには、ナトリウムだけではなくカリウムも必要となります。
実際、塩分の摂取量が多く、高血圧の人が多いとされている東北地方の中でも、カリウムが豊富に含まれているリンゴを多く摂取する青森県においては、高血圧の人は少ないという統計データも存在しています。
他にも2014年に発表された論文では、ナトリウムを7000mg(食塩換算17.8 g)以上摂取すると心臓血管系疾患のリスクが高まるのですが、逆に一日3000mg(食塩換算7.6g)以下にまで制限した場合でも、心臓血管系疾患のリスクが過剰に摂取した時よりよりも高まったという報告もあります。
これは過剰に摂取しても摂らなさ過ぎても、ナトリウムとカリウムのバランスが崩れることが原因と考えられます。
なのでこちらの論文結果も踏まえての、一日あたりの塩分摂取量の目安としては、
- 1日最低3000mg以上(塩分換算:7.6g)
- 7000mg以上は摂らない(塩分換算:17.8g)
というのが適切な値になります。
一般的な日本人の食生活においては、一日に9g~11gの塩分を摂取していると言われているのでそう考えると、塩分の摂取量は適正値であると言えますね。
ちなみにナトリウムやカリウム含めた「ミネラル」に関してもっと知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
>>筋トレをして筋肉をつけたいのなら16種のミネラルについて学ぼう【超重要】
筋トレはアイソメトリック種目が血圧改善には最適
次に血圧を改善する効果が高い筋トレ種目についてですが、ベルギーで行われた研究とオーストラリアで行われた研究によれば、アイソメトリック(等張性収縮)種目が最も効果的であるとされています。
アイソメトリック種目とは簡単に言うと、筋肉を動かさずに力を発揮する種目のことを言います。
代表的なのが腹筋運動のプランクですね。
他にも、女性だとよくバストアップ運動の一環として行っている人の多い、胸の前で思いっきり両手を合わせる運動などです。
アイソメトリック種目はケガの恐れが極めて低いトレーニング種目なので、特に高齢者の方は取り入れてみるのもオススメです。
ただし、アイソレーション種目は筋肥大はしにくいとされているので、筋肉を大きくするのが目的のトレーニーの方は、普通のダンベルなどを使ったトレーニングの方をオススメします。
もちろんそれらの種目でも、十分な血圧改善効果は見込めます。
さいごに
以上が筋トレが血圧を改善する理由についての解説でした。
筋トレは筋肉をつけるだけではなく、このような数多くのメリットを生み出します。
皆さんも、ぜひ正しい知識を身に着けて素晴らしい筋トレライフを送りましょう。