「筋トレをして筋肉を大きくするには超回復が大切って聞いたんだけど本当?」
日本人の多くが信じているこの超回復という理論。
実は超回復には何のエビデンスもない、全くの嘘理論なのです。
超回復が嘘だという理由は主に3つあります。
- 「超回復」と調べても日本・海外ともにまともな論文が見つからないから
- 筋繊維はそう簡単に傷つかないから
- 海外では「超回復=グリコーゲンの超回復」のことを指しているから
ただ、超回復の根本にある、筋トレした後は休養した方が良いという考え方自体は間違っていません。
なので今回は筋肉が大きくなる仕組みを正しく理解したうえで、筋肥大をする食事方法やトレーニングのローテーションの仕方などを詳しく解説していきます。
筋トレと超回復理論の真っ赤な嘘
そもそも超回復理論とはどんなものなのか、改めて見て行きましょう。
下記は厚生労働省のe-ヘルスネットからの引用です。
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。
筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
厚労省=国の機関が運営するサイトにもこのような記載が存在しています。
これだけ見ると、
②傷ついた部分が修復される
③修復された後は元よりも強く・太くなる
という超回復の理論は正しいようにも思えます。
筋トレと超回復の嘘①:論文が存在しない
しかしながら、この厚生労働省のページには超回復の根拠となるようなエビデンスは特に記載されていません。
実際、Googles scholarなどで「超回復」というワードで検索しても、きちんと超回復について研究した論文は出てきませんでした。
それもそのはずです。
何故ならきちんとした研究者であれば「超回復=嘘理論」であることを十分理解しているからです。
太陽が東から昇るのに、何故西から昇るのかを研究するような人はいませんよね?
筋トレと超回復の嘘②:筋繊維はそう簡単に傷つかない
超回復理論の要である「筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます」という部分ですが、そもそもこの部分からして大間違いなのです。
筋トレの内容によっては筋繊維に微細な傷が出来ることもありますが、筋トレの刺激において筋肉は、細胞膜の炎症を起こしたり、疲弊したりする程度にしかダメージを受けません。
むしろ筋繊維が破断する状態というのは、軽度なものでも肉離れや筋挫傷といった、治療が必要な状態のことを指しています。
場合によっては手術が必要なレベルであり、筋トレとか休養とか言ってる場合じゃあありません。
筋トレと超回復の嘘③:海外では「超回復=グリコーゲンの超回復」のことを指す
当サイトでもご紹介したことのある、山本義徳さんも動画で語っている通り、一般的に海外において「超回復」とは「グリコーゲンの超回復」のことを指します。
グリコーゲンの超回復とはいったいなんなのでしょうか。
筋肉は糖質から作られるグリコーゲンを筋肉内に貯蔵しており、必要な時はそのグリコーゲンを分解してエネルギーを作り出します。
そしてその筋肉内に貯蔵されてあるグリコーゲンを空っぽの状態にしてから、今度はグリコーゲンを大量に作り出すような食事をすることによって、筋肉は通常時よりも多くのグリコーゲンを貯蔵できるようになります。
この現象のことを、グリコーゲンの超回復というのです。
グリコーゲンの超回復に関しては、2012年に日本で行われた論文をはじめ、数多くの実証結果や論文が国内外問わず存在しています。
実際、カーボローディングという技術としても、数多くのスポーツ現場で取り入れられているテクニックの1つでもあります。
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以上の事から、日本においては当たり前のように考えられている超回復の理論というのは、全くの嘘である事が理解出来たと思います。
筋トレにおいて休養が大切というのは正しい
ただし冒頭でもお話しした通り、超回復理論の根本にある「筋トレには休養が必要である」という考え方自体は間違ってはいません。
その理由も3つあります。
- 筋トレによって筋分解も促進されてしまうから
- 筋合成の高まりは最大48時間も持続するから
- 筋肉が疲弊した状態だとトレーニングボリュームを稼ぎにくいから
詳しく解説していきましょう。
筋トレと休養①:筋トレは筋分解を促進する
筋トレをすればするほど筋肉が大きくなると勘違いしている人も多いのですが、実はそれは間違いです。
筋トレは確かに筋合成を促進するのですが、同時に筋分解も促進してしまう働きがあることが分かっています。
プロのラグビー選手を対象に行ったこちらの研究では、試合後の選手の筋分解作用(コルチゾールの分泌量)を検査したところ、なんと試合後60時間たったあとも、通常時より34%も高い水準を保っていたのです。
筋肉が大きくなる基本とは「筋合成>筋分解」の状態を作り出すことにあります。
なのでいかにして筋合成の作用を高めるのかと同時に、いかにして筋分解の作用を抑制するのかも考えないと、筋トレの効率はどんどん悪くなってしまいます。
筋トレと休養②:筋トレによる筋合成の高まりは最大48時間持続する
2012年にカナダで行われたこちらの研究によると、筋トレによる筋合成の高まりは最大48時間持続すると言われています。
少なくとも、24時間は継続するのは間違いなさそうです。
逆にいうと48時間よりも短い間隔で筋トレを行ってしまうと、筋合成が高まる期間が被ってしまいますし、なおかつコルチゾールの分泌による筋分解作用ばかりがどんどん高まっていくという、負のスパイラルにも陥りかねません。
筋トレと休養③:疲弊したままだとボリュームを稼ぎにくい
最近の研究では、筋トレにおいて最も重要なのは、1回にどれだけの重さのダンベルを挙げたかではなく、合計でどれだけの量の重さを挙げたかの方だと言われています。
この合計の値のことをトレーニングの総負荷重量と呼びます。
計算式は下記の通りです。
基本的に1回あたりの重量が軽くても、総負荷重量が同じであれば重たい重量を扱った時と同じように筋肥大をするというのが現在主流の考え方です。
なので筋トレの頻度が多くても、トレーニングボリュームさえ稼げるのであれば筋肉は確実に大きくなっていきます。
しかし現実的に考えて、疲労や筋肉痛が残っている状態で毎回ベストなトレーニングを行うことは出来るのでしょうか?
よほどのスーパーマンではない限り、答えはNOです。
なのでトレーニングボリュームの理論を考慮に入れても、毎回ベストなコンディションでなおかつボリュームが最大値になるようなセットの組み方が、最も効率の良い筋トレの方法だと言えるのです。
筋トレの頻度について
以上のことを踏まえると、筋トレは1つの部位につき中3日のペースで行うのが最も効率的と言えます。
それ以上開けると筋合成の高まりも低下していってしまいますし、トレーニングボリュームも稼ぎにくくなってしまいます。
なので効率重視の分割法およびローテーションは「2分割」で「一日おき」に実施するというやり方です。
2分割法とは、まず体の部位をざっくり「上半身・下半身」に分けます。
そしてそれを1日おきに休養日を挟んで交互に行っていくのです。
すると、
といった具合にローテーションすることになるので、全身の部位を中3日でローテーションすることが出来るようになります。
1週間あたりのトレーニング頻度も3回~4回と、そこそこ現実的な数値に収まりますね。
ちなみに上半身・下半身の日に含める種目ですが、
- 上半身:胸・背中・腹筋
- 下半身:肩・腕・下半身
という風に組むと、丁度良く分散されるので参考にしてみてください。
さいごに
以上が筋トレと超回復についての解説でした。
超回復自体は嘘っぱちの理論ですが、日本において休養の大切さを知らしめてくれたという意味では、有用な理論であったのかもしれませんね。
傷つくことで強くなるという、ドラゴンボールのサイヤ人さながらの理論も、受け入れられやすかった理由の1つだと思います。
皆さんも正しく仕組みを理解して、効率よく筋トレをエンジョイしていきましょう。