「筋トレをすると成長ホルモンが増えるって聞いたんだけど、それが筋肉に与える影響について知りたい!」
今回はそんな、筋トレと成長ホルモンの関係について詳しく解説していきます。
結論から言うと、現段階では成長ホルモンの分泌と筋肥大には関係性がないと考えられています。
なので本記事では、
- 成長ホルモンの及ぼす影響について
- 成長ホルモンの分泌量を高めるトレーニングとは
- 成長ホルモンと身長&老化との関係性
について、改めてご説明していきます。
この記事を読めば筋トレと成長ホルモンの関係性について正しく理解することが出来ますよ。
筋トレによる成長ホルモンの分泌は筋肥大には関係ありません
まずはこちらの研究からご紹介していきましょう。
この研究の目的は、筋トレ後のホルモンの分泌量と筋タンパク合成作用の高まりに関する相関性を調べることにありました。
対象となるホルモンは、成長ホルモン・テストステロン・IGF-1の3種類となります。
8人の被験者を対象に、高ホルモン分泌を狙ったトレーニングと低ホルモン分泌に留めたトレーニングの両方を別々の日に行ってもらい、トレーニング後のタンパク質合成作用(MPS)の上昇度合いをそれぞれ計測しました。
結果として、高ホルモン群と低ホルモン群の両方ともでタンパク質合成作用の高まりは計測できたのですが、両者の間に際立った差というのは存在していませんでした。
また、こちらの研究でも同じく高ホルモン群と低ホルモン群に分けて、15週間にわたりトレーニングを実施し筋繊維の肥大具合について調べたところ、どちらともに有意な差は見られませんでした。
以上のことからも、現在では筋トレによる急激な成長ホルモンの増加は、筋肥大に特に影響を及ぼさないと考えられています。
筋トレで成長ホルモンが分泌されても全く意味がない?
以上のように、成長ホルモンは筋肥大の面に関しての影響は少ないのですが、実は成長ホルモンが効果を及ぼすのは筋肉だけではないのです。
特に減量中、ダイエット中の方に知っておいてもらいたいのが、成長ホルモンの脂肪分解促進効果についてです。
成長ホルモンは脂肪細胞に働きかけて、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)を活性化し、体脂肪が脂肪酸へと変わるのを助ける働きを持っているのです。
この脂肪酸がエネルギーとして使われることによって、体内に存在する体脂肪はどんどん減少していきます。
なので筋肥大目的ではなく、減量・ダイエット目的で筋トレを行う場合は、成長ホルモンの分泌を狙ったトレーニングを行うことに十分な意味が存在すると言えます。
他にも、成長ホルモンにはコラーゲン合成を促進する効果があることが知られていますので、関節を強くしたい方や高齢者にも必要なトレーニングの1つとなります。
成長ホルモンの分泌が高まる筋トレ方法とは
では、そんな成長ホルモンの分泌を高めることが出来る筋トレ方法とは、どのようなものがあるのでしょうか?
主には下記の3つが挙げられます。
- セット間のインターバルを短くする
- 筋肉に負荷がかかる時間を長くする(スロートレーニング)
- スクワットやデッドリフトなどのコンパウンド種目(多関節種目)
成長ホルモンの分泌を高める筋トレ①:短いインターバル
一般的に、筋肥大を目的とした筋トレの場合、インターバルの時間を2~3分もうけ、十分に筋肉を回復させた状態でセットに臨む方が良いとされています。
>>【1分は間違い?】最も効果的な筋トレのインターバル理論【論文あり】
ですが、成長ホルモンの分泌を狙う場合は別です。
短いインターバルで行った方が筋肉内の代謝環境をより悪化させることが出来ますので、それに伴って成長ホルモンの分泌量も高まることが分かっています(代謝物受容反応)。
成長ホルモンの分泌を高める筋トレ②:スロートレーニング
通常の筋トレ種目を出来るだけゆっくりとしたスピードで行うスロートレーニング(通称:スロトレ)も、成長ホルモンの分泌量を高めるのに適した種目です。
よく減量末期のボディビルダーなどがスロトレを取り入れているのは、成長ホルモンの分泌=脂肪の分解促進を狙っての事になります。
ただし、スロトレは時間をかけて行う分、トレーニングのボリューム(総負荷重量)は稼ぎづらくなってしまいますので、こちらも筋肥大目的の種目としてはあまり適していません。
成長ホルモンの分泌を高める筋トレ③:コンパウンド種目
スクワットやデッドリフトなどの種目は、トレーニングを実施する際に複数の関節を動かして行いますので、コンパウンド(多関節)種目と呼ばれています。
これらのコンパウンド種目はより大きい部分の筋肉を動員して行うことから、対になるアイソレート(単関節)種目よりもより多くの成長ホルモンが分泌されることが分かっています。
そしてこの現象はまだ未確定ですが、筋トレによって引き起こされる効果転移(クロストランファー)の原因にもなっているのでは?と推測されています。
効果転移とは、コンパウンド種目のような大きな筋肉を使うトレーニングを行った後に、アイソレート種目のような小さな筋肉を使うトレーニングを行うと、単独で行うよりもアイソレート種目の筋肥大効果が高まるという現象のことを言います。
これにはおそらく、成長ホルモンを含めた様々なホルモンの分泌が要因となっているのではないかと考えられているのですが、現時点ではまだ特定出来てはいません。
一説によると、筋肉そのものから筋肥大を促すような物質が局所的に放出されているのでは?とも言われていますが、今後のさらなる研究に期待ですね。
その他成長ホルモンがおよぼす影響について
ではここから筋肥大からは少し離れて、成長ホルモンがおよぼすその他の影響について見て行きます。
成長ホルモンと身長
一般的に成長ホルモンはその名の通り、成長期における身長の伸びに関わっていると考えられていますが、それは間違いない事実です。
実際、成長期に十分な成長ホルモンの分泌が見られない場合、小人症のような症状を引き起こしてしまう場合もあります。
ただし、それはあくまでも成長期における身長においての話です。
すでに大人になった状態では、どれだけ成長ホルモンの分泌を高めたとしても、身長の急激な伸びは期待出来ません。
というのも、成長ホルモンが影響を及ぼすのは、厳密にいうと骨の成長に関してだからです。
成長ホルモンは骨の縦方向の成長を促し、それが結果として身長の伸びに繋がるのですが、それはあくまでも骨端線が開いた状態に限ります。
骨端線が開いた状態なら、栄養状態や様々なホルモンの影響から骨の成長を促すことが出来るのですが、閉じた状態だとほとんど成長は期待できません。
そして大人になるとほとんどの場合、この骨端線は閉じた状態に移行します。
ただし、骨端線が閉じるメカニズムについては完全に解明されたわけではありませんので、人によっては成長ホルモンの分泌が大人になってからの身長の伸びを促す可能性は否定できませんが、限りなく可能性は低いと言えます。
>>筋トレすると身長が伸びなくなるという誤解を生んだ理由【むしろ身長は伸びます】
成長ホルモンと老化
また、実は成長ホルモンの分泌量は加齢とともに減少していくことが分かっています。
このことから逆に、成長ホルモンの分泌量を高めることで老化を防止することが出来るではないかとも考えられていますが、またこちらの因果関係自体は不明です。
ただ、先ほども説明した通り、成長ホルモンの分泌はコラーゲン合成を高める作用も持っていますので、老化と共に衰える膝などの関節を保護する効果は十分期待出来ます。
その他にも筋トレ自体に拮抗筋を鍛え、姿勢を良くする効果もありますので、老化防止を狙って筋トレに取り組む意味というのは十二分に存在すると言えるでしょう。
もちろん、老化防止のためには抗酸化作用のあるサプリメントの摂取も重要です。
>>【筋トレ&ダイエット】αリポ酸の飲み方を徹底解説します【おすすめ4選】
さいごに
以上が筋トレと成長ホルモンの関係についての解説でした。
ちなみに冒頭でもお伝えした通り、筋トレによって高まる程度のホルモン分泌量では、筋肥大には大した影響を及ぼさないのですが、外部から異常な量の成長ホルモンを摂取した場合は事情が少し異なります。
いわゆるドーピングの1つとして、この成長ホルモンを筋肉に注射することで、筋肥大を促進させる効果が存在するというのもまた事実です。
それには成長ホルモンを介して作用するIGF-1というインスリン様成長因子が関わってくるとされていますが、そのあたりはまた別の機会にご紹介したいと思います。