「筋トレのセット間の休憩時間って90秒くらいがいいって聞いたけど、、、」
「インターバルが長すぎるとトレーニング効果が落ちちゃいそう」
筋トレを始めて少したったときに出てくる疑問、それがセット間の休憩時間、インターバルの問題です。
さまざまなトレーニング種目を解説している書籍やサイト、動画では「60秒~90秒」程度で紹介されているものが多いですよね。
私も初心者の頃はトレーニングをする度にYoutubeでフォームを確認し、インターバル時間もそのつどつど調べたりしていました。
しかし、最近の研究では90秒のインターバルは間違いだと言われています。
ではいったいどれくらいのインターバル時間がベストなのでしょうか。
もう答えから先にお伝えしちゃいましょう。
筋トレの各種目間のインターバルは「2分~3分」が最も効果的です。
「小難しい理屈はいらねぇよ!」
って人はこれだけ覚えて帰ってもらえばそれでOKですが、それだけだと納得できない人のために何故「2~3分」がベストなのかを最新の論文を交えて以下より説明していきます。
①インターバルが「2~3分」がベストな理由が分かる
②短いインターバルが何故ダメなのかが分かる
③インターバルの組み合わせ方を知ることができる
インターバルは2~3分が最も筋肥大に効果的
2016年に海外の研究者グループが発表した、下記のような論文があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26605807
この論文の研究内容は「短いインターバルと長いインターバルではどちらがより効果的か」を調べるという内容のものでした。
インターバルによる効果の違いを調べる為に、まず被験者を2つのグループに分けて、同じトレーニング内容を実施します。
1つのグループは「1分」のインターバル(SHORT)
もう片方のグループは「3分」のインターバル(LONG)
で、それぞれ同じトレーニング(ベンチプレスとスクワット)を週3回、これを8週間にわたり継続しました。
結果として、双方のグループともに筋量の増加と筋力UPの効果は見られたのですが、どちらの結果も3分のインターバルで実施したグループの方が高い結果が得られたのです。
(筋量の増加) | 上腕三頭筋 | 大腿四頭筋 |
SHORT | 2.8%増 | 6.9%増 |
LONG | 5.4%増 | 13.3%増 |
(最大重量の増加) | ベンチプレス | スクワット |
SHORT | 4.1%増 | 7.6%増 |
LONG | 12.7%増 | 15.2%増 |
この研究によって、筋トレにおいては「長いインターバル>短いインターバル」であるという事が証明されました。
さらにもう一つ、こちらも2016年に行われたある研究に関する論文です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26907842
こちらの研究は「インターバルを1分、2分、3分、5分と分けて、どれが最も効果的か」を調べた内容のものになります。
この研究によって分かった事実は2つです。
- 1分のインターバルは筋肥大および筋力UPにおいては効果的ではない
- 3分以上のインターバルが筋肥大および筋力UPにおいて効果的で、それ以上長くしても同様の効果が得られる
という事になります。
つまりは先ほどの「長いインターバル>短いインターバル」という事実に加えて「3分以上が最も効果的なインターバル時間」であるということも証明されたのです。
コンパウンド種目とアイソレーション種目ではインターバル時間が異なる
先ほど紹介した2つ目の研究では、被験者を「1分、2分、3分、5分」のインターバル時間で分けて、2種類のトレーニング種目をそれぞれ実施してもらっていました。
それの種目というのは「コンパウンド種目」と「アイソレーション種目」になります。
「コンパウンド種目」とは日本語に訳すと「多関節種目」となり、複数の関節が使われる種目の事を言います。
代表的なのはベンチプレスです。
ベンチプレスでは肘の関節や肩の関節など、複数の関節が関わってきますよね。
それに対する「アイソレーション種目」とは「単関節種目」の事であり、単一の関節のみが使われる種目の事を言います。
例えばアームカールでは肘の関節しか動かさないので、アームカールはアイソレーション種目である事が分かります。
実はこの「コンパウンド種目」と「アイソレーション種目」では、適するインターバル時間が少し違う事が、この研究結果によって判明しました。
コンパウンド種目は3分以上のインターバルを必要としますが、アイソレーション種目は2分以上のインターバルでも十分な効果を得られたのです。
つまり「2~3分」のインターバル時間というのは
- コンパウンド種目は3分以上
- アイソレーション種目は2分以上
という事を示した表現なんです。
もちろん、アイソレーション種目でも3分以上のインターバルをとってもなんら問題ないので、「インターバルはすべて3分」と分かりやすく覚えてもらってもOKです!
今までは短いインターバルが良いとされてきた理由
では、今まではなぜインターバルは「60秒~90秒」程度の短い時間がベストであると考えられてきたのでしょうか。
その根拠としてよくあげられるのが、成長ホルモンの分泌についてです。
これまでは成長ホルモンの分泌が筋肥大においては重要であるという風に考えられてきました。
そして短いインターバルでトレーニング行う事で、成長ホルモンの分泌は促されるので、結果として筋肥大に効果的であるという考え方ですね。
しかし、2012年に行われたとある研究によって成長ホルモンは筋肥大に大して関与しないという事実が判明しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22105707
今では成長ホルモンよりもIGF-1(インスリン様成長因子)の方が重要であると考えられるようになっています。
こうした考え方の変化が、もっとも効果的なインターバル時間を探る先ほどご紹介した研究などに繋がっているのです。
短いインターバルのメリットとは
「それじゃあ短いインターバルでトレーニングするのなんて意味ねぇじゃん」
ここまでの説明を読まれてきた方は、恐らくこのような感想を抱くことでしょう。
なのであえて、短いインターバルにより得られるメリットをご紹介しましょう。
それはパンプ感が得られる事です。
まずはパンプするというのはどういう意味かを説明すると、筋トレを行った後、その使用した部位の筋肉がパンパンに膨れ上がる状態の事を指します。
これは、筋肉が使われることによって乳酸などの疲労物質が血液とともに大量に流れ込み蓄積し、浸透圧の関係から筋細胞内部の水分量が上昇する事によって引き起こされる現象です。
トレーニングした後に筋肉が大きくなったように見えるのは、これが原因なのです。
そしてパンプアップは間違いなく筋肥大には効果的です。
何故なら先ほど説明したように、パンプアップする事で大量の血液が筋肉に引き込まれます。
なのでトレーニング中に血中アミノ酸濃度をしっかりと高めておけば、筋肥大に効果的な栄養素をも取り込む事が出来るからです。
ただ、その効果は長いインターバルによって得られるメリットには劣るというだけです。
決して短いインターバルでのトレーニングも無駄ではないのです。
ちなみにより強いパンプアップ感を得るにはトレーニング前に「プレワークアウト」を使うのが効果的です。
プレワークアウトについては下記記事を参考にして下さい。
短いインターバルと長いインターバルを組み合わせるのがベスト
さて、ここからは実際のトレーニング内容にまで落とし込んで、インターバルの時間を考えて行きましょう。
これまで説明してきたように、
- コンパウンド種目は3分以上のインターバルが必要
- アイソレーション種目は2分以上のインターバルが必要
- 短いインターバルはパンプ感を得られる
という事実が分かっています。
なので実際にトレーニング種目を組み立てる際は、これらを上手く組み合わせていく必要があります。
何故なら、インターバルの時間はどれだけ長くても良いからといって、すべての種目で「5分」のインターバルを取ったとします。
すると必然的にトレーニング全体の時間は長くなりますよね。
単順にそれだけの長い時間を確保するのは難しいですし、モチベーションも続かないです。
なにより、トレーニング時間が長くなるとストレスホルモンの一種であるコルチゾールの分泌を促してしまいます。
コルチゾールは筋肥大を阻害し、脂肪を蓄えさせるように働きかけるという筋トレの敵みたいな存在です。
なのでトレーニング時間は長くても1時間前後が望ましいとされています。
そしてトレーニングの時間を出来るだけ短くする為には、それぞれの種目に適したインターバル時間を選択すればいいのです。
胸のトレーニングを例にあげてみていきましょう。
まずコンパウンド種目であるベンチプレスを行う際は、インターバルは「3分以上」しっかりとって、出来る限り高重量を扱うように意識します。
次にダンベルフライを行うのですが、これはアイソレーション種目なのでインターバルは「2分」程度にしておきます。
扱う重量によっては3分程度でも構いません。
そして最後にケーブルクロスオーバーで大胸筋の内側を狙う際は「低重量×高回数」で、なおかつインターバルは「60秒~90秒」程度にとどめておきます。
最初のベンチプレスとダンベルは長いインターバルを取って筋肥大をダイレクトに狙い、最後のケーブルクロスオーバーではパンプアップによる刺激を得ることを狙うのです。
筋トレにおいてはマンネリが最大の敵
先ほどの組み合わせを見て、
「なんで効果的ではないパンプアップを狙う種目を取り入れたの?全部長いインターバルの種目でいいじゃん」
と思った方もいるのではないでしょうか。
理由は「様々な方向から刺激を与える為」です。
筋肥大が起こる根っこには環境への適応があります。
より重いものを持ちあげるという環境に適応する為に、筋肉を太く・強くさせるという考え方であり、これが漸進性過負荷の原則(プログレッシブオーバーロード)にも繋がっています。
そしてこの環境というのは重量だけではなく与えられる刺激に対しても同様です。
高重量を扱い筋肉にダメージを与えるという機械的な刺激だけではなく、パンプアップによる筋細胞の膨張という化学的刺激も使う事によって、筋肉が刺激になれないようにする事が大切です。
なので同じ部位のトレーニングでも、トッププロは2週間ごとに種目を変えているという人も存在します。
他にも最近有名な山本義徳先生は「マンデルブロトレーニング」という形でマンネリを打破するトレーニングの組み方を体系化されています。
詳しく知りたい人は下記の書籍を購入して読んでみて下さい。
マンデルブロトレーニング以外でも、めちゃくちゃ参考になる内容ばかりです。
さいごに
以上が筋トレにおけるインターバルについての考え方でした。
さいごにここまで説明した内容を改めてまとめておきましょう。
- コンパウンド種目は3分以上のインターバルが必要
- アイソレーション種目は2分以上のインターバルが必要
- 短いインターバルはパンプ感によって「化学的刺激」を狙える
トレーニング中級者~上級者の方は、しっかりと種目ごとの意味を考えた上でインターバルの時間はセットしましょう。
逆にトレーニング初心者の方は、疲れてフォームがばらばらになる恐れもあるので、種目数を減らして「3分以上」のインターバルでトレーニングに臨むようにしましょう。