ケトジェニックダイエットは、1日の糖質(炭水化物)をおおよそ50g以下まで抑え、体のエネルギー源を糖質からケトン体へ切り替える食事法です。名前は知っていても、糖質制限と混同したまま始めてしまい、うまくいかない人が少なくありません。
この記事では、ケトジェニックダイエットの基本原理(糖質を減らすとケトン体が作られ、ケトーシスに入る流れ)、PFCバランスと1日の糖質・脂質・タンパク質の具体的な量(g・kcal)、導入期の進め方、食べていい食材と避ける食材、効果と期間の目安、メリット・デメリットとリスク、筋トレとの両立、停滞期やケトフルーへの対策までを、数値をそえて順番に解説します。
読み終える頃には、自分の体重と摂取カロリーに合わせて「何を・どれだけ食べればよいか」を自分で計算できるようになります。始める前に全体像をつかんでおきたい人は、上から順に読み進めてください。
ケトジェニックダイエットとは?糖質を1日50g以下に抑えてケトン体を使う食事法
ケトジェニックダイエットは、糖質の摂取量を大きく減らすことで、脂肪を分解して作られるケトン体を主なエネルギー源にする食事法です。まずは「なぜ体重が落ちるのか」という原理と、よく混同される糖質制限との違いを押さえておくと、このあとの数値設定でつまずきません。
糖質を減らすとケトン体が作られる仕組み
通常、人間の体は糖質から取り出したブドウ糖(グルコース)を主なエネルギー源にしています。糖質を食べると血糖値が上がり、それを下げるためにインスリンが分泌されます。使いきれなかった糖は、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして、さらに余れば脂肪として蓄えられます。
ここで糖質の摂取量を1日50g以下まで絞ると、蓄えていたグリコーゲンが数日で枯渇します。すると体は不足したエネルギーを補うため、肝臓で脂肪酸を分解してケトン体を作り出すようになります。この「脂肪を主なエネルギー源にする代謝状態」をケトーシスと呼び、体をケトーシスに導くことをケトジェニックといいます。
つまりケトジェニックダイエットの狙いは、体のエネルギー源を「糖質由来のブドウ糖」から「脂肪由来のケトン体」へ切り替え、蓄えた脂肪を燃やしやすい状態を作ることにあります。
ケトン体とは(βヒドロキシ酪酸・アセト酢酸・アセトン)
ケトン体とは「βヒドロキシ酪酸」「アセト酢酸」「アセトン」という3つの物質の総称で、脂肪を分解して作られるエネルギー源です。脂肪由来と聞くとドロドロしたものを想像しがちですが、ケトン体は水溶性なので血流をさまたげることはありません。
もう一つの特徴は、ブドウ糖に代わる代替エネルギーとして脳でも使えることです。脳は普段ブドウ糖を主な燃料にしていますが、ケトーシス下ではケトン体もエネルギー源として利用します。一方で、アセトンに由来する独特の口臭・体臭(いわゆるケト臭)が出やすくなる点は知っておきましょう。
糖質制限とケトジェニックダイエットは何が違うのか
すでに一般的になった糖質制限ダイエットは、1日の糖質を80〜100g程度までに抑える方法が多く、主食を減らしつつも最低限の糖質は摂ります。これに対してケトジェニックダイエットは糖質を50g以下、導入期は20〜30gと限りなくゼロに近づけるため、スーパー糖質制限と呼ばれることもあります。
さらに大きな違いが、脂質の扱いです。糖質制限は「糖質を減らす」だけですが、ケトジェニックは減らした糖質の分を脂質で補い、意図的に脂質を多く摂ります。糖質を減らしただけで脂質も足りないと、エネルギー不足に陥り、筋肉が削られる原因になります。
糖質制限とどう違うのかがまだ曖昧なままなら、先に糖質制限とケトジェニックダイエットの違いを確認しておくと、このあとのPFC計算でつまずきにくくなります。
ケトジェニックダイエットのPFCバランスと1日の糖質・脂質・タンパク質量
ケトジェニックダイエットでは、総カロリーを闇雲に削るのではなく、1日の摂取カロリーをタンパク質・脂質・糖質(PFC)にどう振り分けるかで管理します。目安は糖質12%以下・脂質60%以上・タンパク質28%前後で、これをグラムに直して食事を組み立てます。
PFCとは(タンパク質・脂質・糖質)
PFCとは、Protein(タンパク質)・Fat(脂質)・Carbohydrate(糖質)の頭文字です。それぞれ1gあたりのカロリーが決まっていて、タンパク質は4kcal、糖質も4kcal、脂質は9kcalです。脂質だけカロリー密度が高いので、少量でもしっかりカロリーを稼げます。この係数を使うと、パーセントで決めた配分をグラムに変換できます。
糖質12%以下・脂質60%以上・タンパク質28%の配分
ケトジェニックダイエットでは、糖質からのカロリーを全体の12%以下に抑え、量としては50gを超えないようにします。そのうえで60%以上を脂質から、残りの約28%をタンパク質から摂ります。総摂取カロリーが2000kcalの人を例に、実際の量を計算してみましょう。
(例)1日の総摂取カロリーが2000kcalの場合
糖質:2000kcal × 12% = 240kcal ÷ 4kcal = 60g → 上限50g(約200kcal)に調整
脂質:2000kcal × 60% = 1200kcal ÷ 9kcal = 約133g(意識して150g前後を目標に)
タンパク質:2000kcal × 28% = 560kcal ÷ 4kcal = 140g
普通に生活していると脂質を1日130〜150gも摂ることはまずありません。だからこそ、脂質は「気づいたら足りない」栄養素になりがちで、意識して増やす工夫が必要になります。糖質は「上限50g」を絶対に超えない範囲で、なるべく0に近づけるのが基本方針です。
体重や活動量に合わせた摂取量の目安
タンパク質は筋肉を守るうえで重要なので、体重1kgあたり1.2〜2.0gを目安にします。体重70kgの人なら84〜140gが目安です。脂質は残りのカロリーを埋めるように調整し、活動量が多い人ほど総カロリーと脂質量を増やします。逆にデスクワーク中心で活動量が少ない人は、総カロリーを抑えないと脂質の摂りすぎで減量が進みません。
最初は正確でなくても構いません。まずは糖質50g以下・タンパク質は体重×1.5g前後・残りを脂質、というざっくりした配分から始め、体重の変化を見ながら1〜2週間ごとに微調整していくのが現実的です。
ケトジェニックダイエットの正しいやり方(導入期と移行期間)
ケトジェニックダイエットは、始めてすぐに脂肪が燃える体になるわけではありません。糖質を切ってから体がケトーシスに入るまでには数日かかり、この移行期間の進め方が成否を分けます。ここでは導入期の糖質量、ケトーシスに入るまでの期間、脂質を増やす具体策の3つに分けて解説します。
導入期(最初の1〜2週間)は糖質を20〜30gまで絞る
導入期は、体をできるだけ早くケトーシスへ移行させる期間です。この間は糖質を20〜30gまで絞り、可能な限り0に近づけます。グリコーゲンが枯渇するまでの数日間は、体がまだ糖質を求めているため、だるさや集中力の低下を感じる人もいます。ここを乗り切れるかどうかが最初の関門です。
導入期を過ぎてケトーシスが安定してきたら、糖質は上限50gの範囲で調整して構いません。とはいえ、一度に多めの糖質を摂るとケトーシスから抜けてしまうため、少量をこまめに、が基本です。
ケトーシスに入るまでの期間(2〜7日が目安)
糖質を切ってからケトーシスに入るまでは、一般的に2〜7日程度かかります。もともとの食生活や活動量、筋肉量によって個人差が大きく、糖質を摂りすぎていた人ほど時間がかかる傾向があります。
なかなかケトーシスに入れずに困っている段階なら、判定の目安や入りやすくするコツをまとめたケトーシスの入り方を先に確認しておくと、無駄に足踏みせずに済みます。導入期に糖原性アミノ酸を摂りすぎているとケトーシスが遅れることがあるため、タンパク源の一部をケト原性アミノ酸に置き換える方法も後述します。
脂質を大量に摂る工夫(MCTオイルの活用)
食事だけで1日150g前後の脂質を摂るのは、想像以上に大変です。そこで役立つのがMCTオイル(中鎖脂肪酸)です。中鎖脂肪酸は分解が早く、肝臓でケトン体に変わりやすい脂質なので、ケトーシスの維持を後押しします。
使い方はコーヒーやスープに混ぜる、料理にかけるだけと手軽ですが、摂りすぎると胸やけや下痢を起こすことがあります。1回あたり10g以下に分け、1日トータルで60〜80g程度を目安にしましょう。液状は扱いづらいと感じるなら、マイプロテインなどで売られているパウダータイプのMCTも、飲み物や食べ物に混ぜやすくて便利です。
減量中の脂質の役割をもう少し詳しく知りたい人は、減量中でも脂質はとるべきかもあわせて読むと、脂質を「悪者」にせず付き合えるようになります。
糖質を戻すときの注意(ケトーシスから抜けないために)
ケトーシスは、一度まとまった量の糖質を摂ると簡単に抜けてしまいます。せっかく数日かけて入ったケトーシスを、外食のごはん1杯やスイーツ1個で振り出しに戻してしまうのはよくある失敗です。どうしても糖質を摂りたいときは、1回20g以下に抑えて様子を見ると、抜けにくくなります。
減量が終わって通常の食事へ戻すときも、いきなり糖質を大量に増やすと血糖値の急上昇やむくみ、リバウンドの原因になります。1日あたり10〜20gずつ、1週間単位で少しずつ糖質を戻していくと、体への負担を抑えながら移行できます。
ケトジェニックダイエットで食べていい食材・避ける食材
ケトジェニックダイエットが続くかどうかは、食材選びでほぼ決まります。糖質が少なく脂質・タンパク質が豊富な食材を主役にし、糖質の多い主食や甘いものを外すのが基本です。ここでは積極的に食べたい食材と、避けたい食材を具体的に挙げます。
積極的に食べたい食材
主役になるのは、脂ののった肉、卵、青魚です。サバやイワシなどの青魚に含まれる魚油(EPA・DHA)は良質な脂肪酸で、脂質源として優秀です。植物性ではアボカド、ナッツ類(アーモンド・くるみ・マカダミア)、オリーブオイルやMCTオイルが使いやすく、チーズやバターも活用できます。
タンパク質は肉・魚・卵からしっかり確保しますが、外出時や忙しい日はプロテインパウダーで補うと、糖質を増やさずにタンパク質だけを足せて便利です。
ナッツ類は良質な脂質と食物繊維を同時に摂れる一方で、食べ過ぎるとカロリーオーバーになりやすいので、1日ひとつかみ程度にとどめるのがコツです。
避けたい食材
米・パン・パスタ・うどんなどの主食は糖質のかたまりなので、導入期は基本的に口にしません。砂糖を使ったお菓子やジュース、はちみつ、イモ類、そして果物も糖質が多いため控えます。果物は健康的なイメージがありますが、果糖が多く血糖値を上げるので、ケトジェニック中は少量にとどめます。
数字で見ると避ける理由がはっきりします。参考までに、ごはん1杯(150g)の糖質は約55g、食パン6枚切り1枚は約27g、うどん1玉は約52g、じゃがいも1個は約15g、バナナ1本は約20gです。主食を1食入れるだけで1日の上限50gを超えてしまうため、炭水化物の多い食品は「量を減らす」ではなく「基本は外す」と考えたほうが管理しやすくなります。
見落としがちなのが、ソースやドレッシング、みりん、ケチャップなどの調味料に含まれる糖質です。1品ずつは少なくても積み重なると50gを超えてしまうため、成分表示で糖質量を確認する習慣をつけましょう。
1日の食事メニュー例(2000kcal・糖質50g以下)
数字だけではイメージしづらいので、糖質50g以下・脂質150g前後・タンパク質140gを満たす1日の食事例を挙げます。あくまで出発点の目安なので、自分の体重と活動量に合わせて量を増減してください。
朝:卵3個のオムレツ(バター10g)+アボカド1/2個+MCTオイル入りコーヒー(MCT10g)
昼:サバの塩焼き1切れ+ほうれん草のソテー(オリーブオイル15g)+冷奴
夜:牛肩ロースステーキ150g+葉物サラダ(オリーブオイル15g)+チーズ2枚
間食:素焼きアーモンド20粒+プロテイン1杯
この構成なら糖質はおよそ30〜40g、脂質は肉・魚・卵・オイル・ナッツから150g前後、タンパク質は140g前後になります。物足りなければ脂質の多い食材を足し、体重が落ちにくいと感じたら間食のナッツやMCTを減らして総カロリーを抑えます。米・パン・麺・砂糖を使わないだけで、糖質は自然に50g以下へ収まっていきます。
外食・コンビニでの選び方
安く手軽に買えるものほど糖質でできている、というのがケトジェニック中の悩みどころです。おにぎりやサンドイッチ、菓子パンはほぼ糖質なので選べません。外食では、定食の主食を抜いて主菜と副菜を増やす、丼ものより焼き魚・ステーキ・サラダを選ぶ、といった工夫が必要です。
自炊の時間が取りづらい人は、コンビニで買えるケトジェニック向けの食品から組み立てると続けやすくなります。具体的な商品選びに迷ったら、コンビニで買えるケトジェニック向け食品を参考に、糖質の少ない定番をいくつか決めておくとラクです。
ケトジェニックダイエットの効果と期間の目安
ケトジェニックダイエットで期待できるのは、体脂肪を主なエネルギー源にすることによる減量と、糖質の急な摂取が減ることでの血糖値の安定です。ただし効果の出方や適切な期間には個人差があり、健康状態によっては向かない人もいます。数値の目安と注意点をあわせて確認しましょう。
体重・減量の目安
始めて最初の数日は、体内の水分が抜けることで体重が1〜2kg程度落ちることがあります。これは脂肪が減ったわけではなく、グリコーゲンとともに蓄えていた水分が減ったためです。脂肪の減少はその後、摂取カロリーが消費カロリーを下回っている分だけ、少しずつ進みます。
「糖質を切れば脂質は好きなだけ食べても痩せる」という誤解がありますが、脂質はカロリーが高いため、摂りすぎればカロリーオーバーで体重は落ちません。減量を狙うなら、PFC配分を守りつつ総カロリーを消費以下に保つことが前提です。
血糖値・インスリン・HbA1cとの関係
糖質の摂取量を抑えると、食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)や、それに伴うインスリンの大量分泌が起こりにくくなります。インスリンには脂肪の合成を促す働きがあるため、分泌が抑えられることは減量のうえで理にかなっています。
脳はブドウ糖に加えてケトン体もエネルギー源にできるため、糖質を減らしても活動が大きく落ちるわけではありません。ただし2型糖尿病でインスリン注射や経口血糖降下薬を使っている人は、糖質を急に減らすと薬が効きすぎて低血糖を起こす危険があります。HbA1cや空腹時血糖値の管理は主治医と相談しながら進め、自己判断で薬を調整しないでください。
女性が取り組むときの注意点
女性がケトジェニックダイエットを行う場合、極端なカロリー不足や糖質不足がホルモンバランスや月経に影響することがあります。体重を落とすことだけを優先して総カロリーを削りすぎると、体調をくずしたり月経周期が乱れたりする原因になります。
タンパク質は体重×1.2〜1.5gを下限として確保し、脂質でカロリーをしっかり埋めることが大切です。体調や周期に変化を感じたら糖質量やカロリーを見直し、無理があると感じたら中断する判断を優先してください。
どのくらい続ければいい?期間の考え方
導入期の1〜2週間でケトーシスに入り、そこから減量ペースを見ながら数週間〜数か月続けるのが一般的な進め方です。長く続けるほど厳密な食事管理が求められ、外食や食費の負担も積み重なります。目標体重に近づいたら、脂質制限(ローファット)など別の方法へ切り替えていく人も多くいます。
減量後半でローファットへの切り替えを考えているなら、ケトジェニックからローファットへの切り替え方を先に見ておくと、リバウンドしにくい移行プランを立てやすくなります。
ケトジェニックダイエットのメリット・デメリット・リスク
ケトジェニックダイエットには、空腹感が出にくく筋肉を守りやすいといった続けやすさの面での利点がある一方、食費や外食のしにくさ、体質によるリスクもあります。始める前に良い面と負担の両方を把握しておくと、途中で挫折しにくくなります。
メリット:筋肉を守りやすく空腹感が出にくい
最大のメリットは、しっかりケトーシスに入れれば、エネルギー源が脂質に切り替わり、筋肉の分解(カタボリック)を抑えやすいことです。糖質を減らすだけの糖質制限では、不足したエネルギーを補うためにタンパク質を分解してブドウ糖を作る糖新生が進み、筋肉が削られやすくなります。ケトーシス下ではこの負担を減らせるため、筋トレをする人にも取り組みやすい方法です。
もう一つは、脂質を多く摂ることで満腹感が続き、空腹によるイライラやドカ食いが起きにくいことです。肉や魚をしっかり食べられるので、量を我慢するタイプのダイエットより精神的な負担が軽く感じられる人も多くいます。
デメリット:食費がかさみ外食がしにくい
デメリットは主に3つあります。1つ目は食費で、安く買える食品の多くが糖質のため、肉・魚・良質な脂を中心にするとどうしても食費が上がります。2つ目は外食のしにくさで、軽食や丼もの、麺類が選べず、食べられるメニューが限られます。3つ目は、小食の人にとっては「肉や脂を大量に食べること」自体が負担になり、逆にきついと感じる点です。
リスクと注意点
導入期には、だるさや頭痛、集中力の低下といったケトフルーと呼ばれる不調が出ることがあります(対策は後述します)。また、脂質の摂取が増えることでLDLコレステロールなどの数値が変動する場合があり、健康診断の結果が気になる人は定期的にチェックしたほうが安心です。
LDLコレステロールや中性脂肪が高めの人は、3か月に1回程度は数値を確認し、悪化するようなら脂質の「質」を見直します。飽和脂肪酸に偏らせず、青魚の魚油(EPA・DHA)やオリーブオイルなど不飽和脂肪酸をバランスよく取り入れるのが、良質な脂質を摂るうえでのポイントです。
腎臓や肝臓に持病がある人、妊娠・授乳中の人、成長期の人は自己判断で行わず、必ず医師に相談してください。ここで紹介する食事法やサプリメントは、病気の治療や予防を保証するものではありません。体調に異変を感じたら中断し、専門家の判断を仰ぐことを優先してください。
ケトジェニックダイエットと筋トレの両立
「糖質を切ると筋トレのパフォーマンスが落ちるのでは」という不安はよく聞かれます。結論から言うと、トレーニングの組み方とサプリメントの使い方しだいで、パフォーマンスの低下を抑えながら筋トレを続けることは十分に可能です。仕組みから見ていきましょう。
糖質不足でパフォーマンスは落ちる?(ATP・解糖系・クレアチンリン酸系)
筋肉は運動するとき、ATP(アデノシン三リン酸)をエネルギー源として使います。ATPはわずか数秒で枯渇するため、運動中は常に再合成されています。この再合成には、筋肉のグリコーゲン(糖質)を使う解糖系と、クレアチンリン酸を使うクレアチンリン酸系という2つの仕組みがあります。
糖質が不足すると解糖系が働きにくくなるため、「筋トレのパフォーマンスが落ちる」と考えられてきました。ただし最近では、これはトレーニングの条件によって変わる可能性が指摘されています。
トレーニングの組み方を工夫する
目安として、中強度(最大筋力の50〜70%)・高ボリューム(10セット以上)で50分以上かける長時間のトレーニングでは解糖系への依存が大きく、糖質不足の影響を受けやすいと考えられます。一方、高強度(最大筋力の85%以上)・低ボリューム(8セット未満)で40分以内に終えるトレーニングでは、クレアチンリン酸系が優先的に使われます。
そのためケトジェニック中は、扱えるぎりぎりの重量で短時間・少レップにまとめると、パフォーマンスの低下を抑えやすくなります。なお、これらの研究結果は仮説の段階を含み、感じ方には個人差があります。無理をせず、自分の体調に合わせて調整してください。
筋肉を守るためのアミノ酸・クレアチン
導入期に糖原性アミノ酸を摂りすぎるとケトーシスに入りにくくなることがあります。これを避けるには、タンパク源の一部をケト原性アミノ酸であるロイシン・リジンに置き換える方法が有効です。具体的には、通常の食事のタンパク質の一部をBCAAやEAAに置き換えます。BCAAにはケト原性アミノ酸のロイシンが含まれるため、ケトーシス化を後押ししやすい選択肢です。
ロイシン比率の高いマイプロテインのBCAA 4:1:1は、通常のBCAAよりロイシンが多く、この目的に向いています。すでにEAAを持っている人は、無理に買い足さず手持ちのものを活用して構いません。BCAAとEAAの違いが気になる人は、EAAの効果とBCAAとの違いを読んでから選ぶと、二重買いを防げます。
もう一つ、筋トレと並行する人にほぼ必須と言えるのがクレアチンです。クレアチンリン酸系を支えるため、ケトジェニック中で糖質が少ない状況でも、扱える重量を保ちやすくなります。
停滞期・ケトフルー対策とあると便利なアイテム
ケトジェニックダイエットでつまずきやすいのが、導入期のケトフルー(だるさ・頭痛)と、途中で体重が動かなくなる停滞期です。どちらも原因を知っておけば対処できます。あわせて、ケトーシスの確認や継続を助けるアイテムも紹介します。
ケトフルー(倦怠感・頭痛)への対処
導入期に感じる倦怠感や頭痛、ふらつきは、糖質を切ったことでナトリウムなどのミネラルと水分が抜けやすくなるのが主な原因です。対策はシンプルで、水分をこまめに摂り、塩分(ナトリウム)を意識して補給し、マグネシウムやカリウムなどのミネラルを不足させないことです。多くの場合、体がケトーシスに慣れる数日〜1週間で落ち着いていきます。
具体的には、1日を通してこまめに水を1.5〜2L飲み、汗をかいた日は塩分を少し多めに意識します。だしスープや味噌汁で塩分とマグネシウム・カリウムを補うのも手軽です。それでも頭痛やだるさが強いときは、無理に糖質を0へ近づけず、糖質を一時的に少し戻して体を慣らすほうが結果的に続けやすくなります。
また、糖質を含む食品は食物繊維も多く含むため、糖質を切ると食物繊維が不足して便秘になりやすくなります。食物繊維の一種であるイヌリンや難消化性デキストリンをサプリメントで補うと、お通じの悩みを軽くしやすいです。
停滞したときの見直しポイント
順調に落ちていた体重が動かなくなったときは、まず総摂取カロリーを見直します。脂質はカロリーが高いため、MCTオイルやナッツを増やしすぎて、気づかないうちにカロリーオーバーになっているケースが多いからです。次に活動量を確認し、日常の歩数や運動が減っていないかをチェックします。糖質が知らないうちに増えていないか、調味料まで含めて振り返るのも有効です。
目安として、体重が2週間以上まったく動かないなら、脂質を1日20〜30g減らして総カロリーを200kcalほど下げてみる、あるいは1日の歩数を増やして活動量を上げる、といった小さな調整から試します。一度に大きく削ると筋肉が落ちたり体調をくずしたりするので、変えるのは1つずつが基本です。
ビタミンB群も、停滞期に見直したい栄養素です。ビタミンB6はタンパク質の代謝を、ビタミンB2は脂肪をエネルギーに変える働きを助けます。糖質を減らすと不足しがちなので、食事で補いにくい人はサプリメントを検討しましょう。
ケトーシスの確認・継続をサポートするアイテム
ケトーシスに入っているかどうかを自分で把握できると、導入期の不安がぐっと減ります。手軽なのがケトスティック(尿でチェックする試験紙)で、尿を試験紙につけたときの色でケトン体の量の目安がわかります。より手間なく測りたい人は、呼気で測定するタイプもあります。
なかなかケトーシスに入れないときの選択肢として、ケト原性アミノ酸のリジンを補う、抗酸化作用とインスリン感受性に関わるαリポ酸を使う、ケトン体そのもの(βヒドロキシ酪酸/BHB)を摂る、といった方法もあります。いずれも必須ではなく、食事管理を土台にしたうえでの補助として考えてください。
ケトジェニックダイエットのよくある質問
最後に、始める前につまずきやすいポイントを質問形式でまとめます。細かな数値は体重や活動量で変わるため、あくまで出発点の目安として使ってください。
1日の糖質は具体的に何gまで?
基本は50g以下、導入期は20〜30gが目安です。ごはん1杯(150g)で糖質はおよそ55g前後あり、それだけで1日の上限を超えます。主食を抜く前提で考えるのが現実的です。
脂質はどんな油で摂ればいい?
青魚の魚油(EPA・DHA)、オリーブオイル、アボカド、ナッツ類、MCTオイルなど、質のよい脂質を組み合わせます。特にMCTオイルはケトン体になりやすいので、1回10g以下・1日60〜80gを目安に取り入れると続けやすいです。
筋トレ前に糖質を摂ったほうがいい?
ケトジェニック中は、扱えるぎりぎりの重量で短時間・少レップに組めば、糖質を足さなくてもクレアチンリン酸系で対応できます。それでもパフォーマンスの低下が気になる場合は、トレーニング直前に5〜10g程度の少量の糖質を摂る方法もありますが、ケトーシスから抜けない範囲にとどめるのがコツです。
何kg痩せますか?リバウンドしませんか?
減る量は摂取カロリーと消費カロリーの差で決まるため、一概には言えません。最初の数日で落ちる1〜2kgは水分によるもので、脂肪の減少はその後じわじわ進みます。通常食に戻すときに糖質を一気に増やすとリバウンドしやすいので、前述のとおり1週間単位で少しずつ糖質を戻すことが、体重を維持するうえで重要です。
お酒は飲んでもいい?
ビールや日本酒、甘いカクテルは糖質が多いので控えます。糖質の少ない蒸留酒(焼酎・ウイスキー)を少量なら選びやすいですが、アルコール自体が脂肪燃焼を後回しにするため、減量を優先するなら量は抑えめにしましょう。
さいごに
ケトジェニックダイエットは、糖質を1日50g以下に抑え、脂質を主なエネルギー源に切り替える食事法です。仕組み自体はシンプルですが、成功させるには「糖質を減らすだけでなく脂質をしっかり摂る」「PFCと総カロリーを管理する」「導入期のケトフルーを乗り切る」という3点を押さえることが欠かせません。
まずは糖質50g以下・タンパク質は体重×1.5g前後・残りを脂質、というざっくりした配分から始め、体重の変化を見ながら調整していきましょう。体調に不安がある人や持病のある人は、無理をせず医師に相談したうえで取り組んでください。













