皆さんはステロイドというものをご存じでしょうか?
この場合のステロイドとは、薬局などでも購入できる皮膚薬などに含まれているものではなく、筋肥大を引き起こす作用を持つアナボリックステロイドの事を指します。
よくスポーツのドーピング事件なんかで取り上げられることも多いので、なんとなくその存在と名前くらいはご存じの方も多いのではないでしょうか。
実はこのステロイド、フィットネス業界とは切っても切れない非常に深い関係で繋がっているのです。
なので今回はそのステロイドの特徴と効果、副作用について詳しく解説していきます。
ステロイドとはどんなもの?
まずはステロイドとは何なのか、下記はWikipediaのアナボリックステロイドの項目から引用した説明です。
アナボリックステロイド(anabolic steroid)(anabolic androgenic steroid, AAS)は、生体の化学反応によって外界より摂取した物質から蛋白質を作り出す作用、すなわち蛋白同化作用を有するステロイドホルモンの総称。多くは男性ホルモン作用も持っている。
『アナボリック』の語源は『構築する』を意味するギリシャ語の『anabolein』で、一般的には単に『ステロイド』と呼ばれるが[1]、糖質コルチコイド成分の『ステロイド』(副腎皮質ホルモンなど)とは異なる。
Wikipediaより引用
このように、皮膚薬に使われるステロイドとは全く違ったものであり、一般的にステロイドとはこのアナボリックステロイドのことを指しています。
ステロイドには筋合成を促進させる作用がある
ステロイドは男性ホルモンの1種でもあるテストステロンの同位体でもあります。
元々はテストステロンの効果を高めるために作られていたのですが、最終的には体内でテストステロンを代替するホルモンとして完成されました。
その効果をひと言で言うと、筋合成作用を高める、つまりは摂取するだけで筋肉を大きくすることが出来るというものです。
ステロイドを使うとどうなるの?
先ほども説明した通り、ステロイドの効果は非常にシンプルです。
- 摂取するだけで何もしなくても筋肉が増えて行く
これにつきます。
摂取するだけで筋肉が増える理由
体においては常に、筋肉の合成作用と分解作用が発生しています。
何もしていない自然な状態ではこの合成作用と分解作用が釣り合っているため、筋肉が大幅に増えることも、大幅に減少することはありません。
通常は筋トレを行う事によってこの筋合成作用を高めたり、はたまたストレスを受ける事によって分解作用が高まったりすることで、筋肉が増えたり減ったりするわけです。
しかし、このステロイドを摂取すると、筋合成作用が大幅に高まるので、栄養を取り込めば取り込む程それを筋肉に変えてくれる、いわば体を筋合成のボーナス状態にしてくれるのです。
一般的に筋トレを長年やりこんでいる人になればなるほど、増える筋肉量は減少していきます(年間で約1kg程度増えればいい方です)。
しかし、ステロイドを使用すればその限界を突破し、ありえないペースでの筋肥大を可能とするのです。
ステロイドを使う事による副作用は?
メリットだけに目を向けるとそんな素晴らしい効果を持つステロイドですが、もちろん、摂取することによるデメリット、副作用も存在します。
- テストステロンが生成されなくなる
- ホルモンバランスが乱れる
- 内臓へのダメージがある
それぞれ詳しく説明します。
ステロイドの副作用①:テストステロンが生成されなくなる
ステロイドの特徴についてお話した時に、ステロイドはテストステロンの同位体だと説明しました。
だからこそ、ステロイドを外部から摂取するようになると、今まで体内で自然に生成されていたテストステロンが段々と作られなくなっていくのです。
テストステロンが減少するとどうなるか。
主に精神的な部分での副作用となりますが、倦怠感、イライラ、鬱などの症状を引き起こすと言われています。
ステロイドの副作用②:ホルモンバランスの乱れ
テストステロンが少なることによる影響は、精神的なものだけにとどまりません。
男性機能に関する影響も多々存在します。
一番有名なのは胸と乳首が女性のように発達するという女性化乳房現象や、睾丸の縮小や精子の減少。
他にも頭髪の薄毛なんてのも副作用として挙げられます。
ステロイドの副作用③:内臓へのダメージ
ステロイドの最も甚大な副作用は、この内臓へのダメージでしょう。
ステロイドを摂取することで血圧が上昇するのですが、その分心臓への負担は増加します。
その状態で激しい有酸素運動を行えば命に係わるケースもありますし、他にも肝機能障害や循環器疾患などのリスクも高まります。
ステロイドユーザーの中には筋肉が異常に発達しているせいもありますが、少しの運動ですぐに息切れをしたり、常に気だるげな人が多いのはこれら内臓へのダメージが原因である場合がほとんどです。
ステロイドを使用するのは違法なの?
結論からいうと、ステロイドの使用は違法ではありません。
日本国内においては、個人で輸入し販売する分には一切罪には問われません。
ですが日本よりもさらに手軽にステロイドが手に入るアメリカにおいては、一部の州でステロイドの使用が禁止されていたりもします。
そして日本でも、昨今のフィットネスブームの影響によりステロイドによる健康被害が徐々に増加していることから、厚生労働省が輸入制限に向けた調査を始めたなんて話も聞こえてきます。
また、使用自体は合法ですが、競技スポーツの大会などではほとんどがその使用者の参加を禁じている場合がほとんどです。
JADA(日本アンチドーピング連盟)やWADA(世界アンチドーピング連盟)に加入している競技の大会などでは、出場者にドーピングチェックを行っていたり、薬物違反者やその関係者に対して出場禁止処分を行うケースも存在しています。
なのでそういったステロイドの使用が禁じられている大会に、使用していないと偽って参加することは重大なルール違反であり、法は犯してはいないですが、モラルには反していると言えるでしょう。
どんな人がステロイドを使用しているのか
ステロイドの使用者は主に下記の2パターンです。
- スポーツで結果を出したい人
- とにかく筋肉をデカくしたい人
スポーツの場合は「違反してでも勝ちたい」というケースがほとんどです。
そして筋肉を大きくする事自体が目的な人の中でもさらに下記のように分かれます。
- 個人的な趣味で筋肉を大きくしたい
- 海外のボディビルのプロ選手になりたい
個人の趣味というのはそのままの意味ですが、海外のボディビルプロ選手がどう関係するのか。
詳しく説明します。
海外のプロボディビルダーはほぼ全員がステロイドを使用している
残念なことに、これが現実です。
IFBBプロというアメリカ最大級のボディビル連盟というのがあるのですが、この団体が主催するプロ選手だけがエントリーする事の出来る大会は、基本的にステロイドを使用していることが前提となっている大会です。
これは、引退したトップ選手たちが皆口を揃えて言っていることなので、もはや公然の秘密です。
そしてなぜこのようなことが許されているのかというと、すべては興行のためです。
つまりは、ショービジネスとしての側面が強調され過ぎた結果となります。
何度も言ってる通り、ステロイドを使用すると、人間の限界を超えた筋肉量を手にすることが出来るようになります。
そして見ている方も、人間離れした圧倒的なデカい体を見ている方が当然楽しいですよね。
これが現状の、海外のフィットネス業界が抱える大きな矛盾なのです。
少しずつフィットネス業界が発展してきている日本では、そのような悪しき風習にまで追従する必要はないと思います。
さいごに
以上がステロイドについての解説でした。
確かに現状日本ではまだ使用は合法ですが、その性質は麻薬となんら変わりないものだと思います。
一時の快楽を優先させ、体を破滅へと向かわせる。
そんなものの使用が「個人の自由」の名のもとに許される現状はどう考えてもおかしいです。
特に有名なフィットネス選手やYoutuberは、その影響力の大きさからもステロイドを当たり前に使用するべきではないはずです。
その人たちの体を見て、何も知らない一般人が憧れ、気軽にステロイドに手を出して、体を壊す。
実際アメリカでもそれが問題になっているので、使用を禁止する州が出てきているのです。
フィットネスとは本来、自らの健康を追求するために行うものです。
ステロイドの使用を考えている人は、どうか一度その理念に立ち返り、命を削ってまで得る価値があるものなのかをしっかり見つめなおすようにしましょう。