「最近筋トレの記録が伸びないし、体が変わってる実感があまりないんだよね……」
そんな悩みにこの記事ではお答えしていきます。
主に対象となるのはトレーニング歴が2~3年未満の比較的初心者に近い方々です。
もちろん中級者以上でも、アレンジを加えれば停滞期(プラトー)を打破することは十分可能です。
まず伸び悩みを感じてる人が考えるべきなのは、次の3点になります。
- 食事や栄養管理は十分か?
- オーバーワークに陥ってはいないか?
- 常に新たな刺激を取り入れられているか?
こちらを踏まえた上で早速解説していきます。
特にトレーニング始めたての初心者の方は、どのくらいの期間から伸び悩みを感じるのかも分かるようになりますよ。
筋トレの停滞期を打破するための3つの方法
冒頭でもお伝えした通り、まず見直すべきは次の3点です。
- 食事や栄養管理について
- トレーニングの頻度について
- トレーニングの内容について
それぞれ詳しく説明します。
筋トレの停滞期打破のために①:食事&栄養管理
筋トレの重量が伸びない、筋肉が大きくなっている気がしないという停滞期(プラトー)に陥ってしまった場合、改めて食事の方法から見直していきましょう。
筋力UPにおいても筋肥大においても重要なのは、何よりもまず食事だからです。
筋肉が大きくなるための基本は「摂取カロリー≧消費カロリー」の状態を作り出すことにあります。
自身の消費カロリーの求め方については【ダイエット・減量前に】自分の基礎代謝を知ろう!1日に消費するカロリーの計算方法とはという記事でご紹介しています。
基本的に多くの人が筋トレで付けたいと思うような筋肉の量というのは、人間が生きていく上では不必要な量であることがほとんどです。
なので余剰のカロリーというのが体内に存在しない限りは、どれだけ筋トレを行ったとしても、体はなかなか筋肉を作る方に栄養を回してはくれません。
それくらい筋トレと食事というのは深く繋がっているのです。
筋トレと食事の関係については筋トレで体を変えるには食事管理が大切だというお話【マッスルデリを利用して効率よくやせる】という記事でもより詳しく書いておりますので、こちらもぜひ。
あとはビタミンやミネラルなどの微量栄養素の存在も見逃せませんね。
>>【完全保存版】筋トレする人向け!必要なビタミン摂取量をまとめてみた【栄養素表示基準値とは違う】
>>筋トレをして筋肉をつけたいのなら16種のミネラルについて学ぼう【超重要】
ビタミン・ミネラルについて良く知らないという人は、この2記事を読んで勉強してみてください。
それすら面倒な人は、とりあえずプロテインをトレーニング前後と日中のどこかで合計3回飲むようにするだけでもだいぶ違います。
安くて美味い、おすすめのプロテインを貼っておきますね。
筋トレの停滞期打破のために②:トレーニングの頻度
きちんと筋トレの回数をこなしているのに伸び悩みを感じる人の多くは、オーバーワークに陥ってしまっている場合がほとんどです。
筋トレは回数をこなせばこなすだけ、筋肉を太くしてくれると勘違いしていませんか?
確かに筋トレには、筋肉を太くする筋合成を高める作用がありますが、実は同時に、筋肉を細くしてしまう筋分解を促進する効果も存在しているのです。
筋分解を促進する原因の多くは、コルチゾールというストレスホルモンの分泌が関係しています。
ラグビー選手を対象に行ったこちらの研究では、試合後の選手は、60時間経過したのちもコルチゾールの水準が通常時よりも34%も高い数値を記録したそうです。
このことから考えても、効率良く筋肉をつけるためには3日以上の休養をしっかりと挟むことが大切です。
筋トレの頻度については筋トレと超回復理論の真っ赤な嘘【エビデンスはありません】という記事でも解説してます。
超回復を信じている人も信じていない人も、一度は目を通してみて下さい。
筋トレの停滞期打破のために③:トレーニングの内容
①と②をきちんと理解した上で、それでも停滞期に陥っている人は、トレーニングの内容を見直す必要があります。
逆に言うと、食事や栄養の管理をおろそかにしており、オーバーワークに陥るほどの頻度でトレーニングを行っている人は、どれだけ種目を工夫したところで停滞期を打破することは難しいです。
その前提を理解した上で、次に何故停滞期に陥るのかと、停滞期を打破するために取り入れるべき刺激について詳しく見て行きます。
筋トレと停滞期の関係性
まず知っておくべきなのは、トレーニングの記録が伸びるのはどんな時かという事です。
主に関わる要素としては、次の3つとなります。
- 筋肥大(筋繊維の断面積の増加)
- 学習効果(動作特異性)
- 神経系の抑制
筋力に関わる要素①:筋肉量
筋肥大はその名の通り筋肉が太くデカくなることです。
多くの人はこれが全てであると考えていますが、実は違います。
1つの種目をやり込むと、3ヶ月でパフォーマンスは20%向上すると言われています。
50kgしか挙がらなかった人でも60kgまで挙がるようになるということですね。
ただし、その20%のパフォーマンスの向上において、筋肥大が関与しているのは10%だけなのです。
筋力に関わる要素②:学習効果(動作特異性)
では残りの10%はなんなのかというと、おもに学習効果(動作特異性)と神経系の抑制の影響によるものとなります。
学習効果とは、簡単に言うと体がその種目のやり方を覚えて、体の使い方が上手くなった状態だと考えて下さい。
なのでいわゆる運動神経が良い人というのは学習効果が働きやすいので、筋トレにおいても記録自体は伸びやすい場合が多いです。
ただしそれが、筋肥大にとっても効果的であるかどうかはまた別のお話です。
筋力に関わる要素③:神経系の抑制
3つ目の神経系の抑制についてです。
筋肉も当然ですが、脳からの指令を受けて働く神経に筋繊維が支配されています。
筋トレに慣れていない状態だと、脳が神経のはたらきをセーブしてしまうので、筋肉量に対してパワーが十分に発揮されない場合というのがよくあります。
しかしそれも、筋トレの種目を繰り返していくことで、だんだんと脳のセーブが外れていき、筋量に見合った力が発揮できるようになるというわけです。
ちなみにこの学習効果を理解するときにイメージして欲しいのが、野球選手のイチローです。
イチロー選手はメジャーリーグにおいて年間で最もヒットを多く打った選手ですが、最も筋肉が大きい選手かと言われたら、決してそうではありませんよね?
イチロー選手の場合「ヒットを打つ」という特異な運動に対して最もパフォーマンスを発揮したということです。
「だから筋肉は必要ない」という事を言いたい訳ではなく、目的に応じて筋肉の付け方や使い方は異なってくるということを、知っておいてもらいたいのです。
それはもちろん、筋肥大目的の筋トレの場合も同様です。
ちなみに初心者のほうが、この学習効果は特に働きやすいです。
ただ、トレーニングを開始して1ヶ月あたりで学習効果と神経系の抑制による記録の向上は伸び悩み始めます。
そこからは筋肉量の増大とともにゆっくりと記録は伸びていくので、あせってオーバーワークに陥ったり、無理なフォームで高重量を扱ったりはしないようにしましょう。
筋トレの停滞期を打破するための新たな刺激
次に、停滞期を打破するためにはどのような刺激を取り入れればいいのかを説明します。
注目すべきはこの2つの刺激です。
- ネガティブでの刺激
- 化学的刺激
筋トレ停滞期打破のための刺激①:ネガティブ刺激
ネガティブ刺激とは、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する、伸張性収縮のことを指します。
それと対になる一般的な筋収縮のことを、ポジティブ動作と称することもありますね。
ネガティブ刺激を分かりやすく説明すると、重量に抗いながら力を発揮する際に起こる刺激だと考えてください。
アームカールであれば、ダンベルを持ちあげて降ろす際の刺激。
ベンチプレスであれば、バーベルを挙上し胸に降ろす際の刺激が、ネガティブ刺激となります。
ネガティブ刺激の特徴は次の3つです。
- 1RM(ぎりぎり1回持ちあがる重さ)の120%の重量を扱える
- 速筋の方から先に動員される
- 1つの運動単位にかかる刺激は大きくなる(運動単位は小さくなる)
基本的に、ネガティブの方がポジティブ動作よりもより重い重量を扱えるようになります。
その理由は、使われる筋繊維が発揮する力がポジティブ動作の約2倍近くに匹敵するからです。
なぜそんなにもパワーを発揮できるのかというと、それには筋繊維の構造が深く関わってくるので、ここでは長くなるので割愛させてもらいます。
そしてそれだけの力を発揮するために、持久力に優れた遅筋ではなく、瞬発力に優れた速筋の方から先に動員されるのです。
基本的に遅筋は筋肥大しにくく、速筋は筋肥大しやすいと言われているので、筋肥大目的のトレーニングの場合はネガティブ刺激刺激を取り入れると効果的な理由が分かりますよね。
ただし、デメリットももちろん存在します。
それは、
- 力を発揮しやすい分、筋繊維が回復するのに時間がかかる
- 動員される筋繊維の数は少なくなる
という2点です。
ネガティブ刺激は筋肉に微細な傷をつけることが分かっています。
東大の石井教授の研究によると、筋トレ初心者の場合、ネガティブ刺激のみのトレーニングを行った場合、完全に筋肉が回復するまでに28日間も要するという結果も報告されています。
また、ネガティブ動作では筋繊維は2倍の力を発揮できると言いましたが、実際にはそうとは限りません。
何故ならそれだけの力を発揮すると筋繊維自体もダメージを受けてしまいますし、関節などにも負担がかかってしまいます。
そうならないよう、脳は動員する筋繊維の数を減らすことによって、発揮する力をコントロールしようとします。
そうなると、筋繊維にかかる負担自体は大きくなるのですが、使われる筋繊維の数は減少してしまうので、プラスマイナスで効果がトントンになってしまうのでは?といった意見も存在しています。
筋トレ停滞期打破のための刺激②:化学的刺激
多くの人は筋トレの刺激において、重量を重くすることで筋肉に刺激を与えようとします。
この重たい重量を扱う事で筋肉に与えられる刺激のことを機械的刺激といいます。
それに対して実はもう1つ、筋肥大を起こすための刺激というのが存在しているのです。
それが化学的刺激になります。
化学的刺激にはどのようなものがあるかと言うと、ざっと下記のようなものが化学的刺激になりえると言われています。
- 筋肉を動かすエネルギーの減少(グリコーゲンやクレアチンリン酸など)
- 酸素濃度の低下
- 血流の上昇
- ph値の低下(酸性に傾く)
- 代謝環境の変化
軽い重量でも限界ギリギリまで追い込めば筋肉は大きくなるのですが、それにはこの化学的刺激が大きく関わっているのです。
停滞期打破のための2つの刺激の内容を理解したところで、次に実際にこれらを取り入れたトレーニング方法を解説していきます。
筋トレの停滞期を打破する具体的なトレーニング法
おすすめする方法は2つあります。
それは
- 線形ピリオダイゼーション
- 非線形ピリオダイゼーション
の2つになります。
線形ピリオダイゼーションの組み方
ピリオダイゼーションとは「期分け」のことを指しており、線形ピリオダイゼーションとは綺麗にプログラムを組んで期分けをするトレーニング方法だと考えて下さい。
具体的なやり方を説明します。
まず、
- 化学的刺激狙いのフェイズ(3週間~4週間)
- 神経系の発達狙いのフェイズ(3週間~4週間)
- ネガティブ刺激狙いのフェイズ(2週間以内)
- 回復フェイズ(2週間~3週間)
の4つフェイズに期間を区分します。
化学的刺激狙いのフェイズにおいては、1RMの60%程度の重量で1セット8レップ~15レップほど、これを4セット繰り返します。
比較的軽い重量で、筋肉を限界まで追い込むことが目的です。
次の神経系の発達狙いのフェイズにおいては、1RMの90%~95%となる重量で、1セット4レップ~6レップほど、これを2セットだけ繰り返します。
あくまでも神経系の発達狙いなので、必ずしもギリギリまで追い込む必要はありません。
軽々と8回以上扱えるようなら、重量の見直しが必要ですが。
次のネガティブ刺激狙いのフェイズにおいては、トレーニングパートナーがいる人は1RM120%の重量に、さらに80%をかけた重量で行って下さい。
1RMが100kgの人なら、100kg×120%×80%=96kgとなります。
ベンチプレスの場合、バーベルを挙上する際はパートナーの力を借りて挙げ、ネガティブ動作のみ自力で行います。
だいたい3秒~4秒ほどかけておろすのを1セット3~6レップ、これは1セットだけで十分です。
ちなみにパートナーがいない人は、レストポーズ法というやり方を取り入れて下さい。
これは、
①ぎりぎり4回挙がるかどうかという重量で3回行う②20秒休憩
③同じ重量で1~2回行う
④20秒休憩
⑤同じ重量で1~2回行う
⑥終了
というやり方になります。
注意点としては、
- ネガティブを意識する
- 休憩(インターバル)を長くしない
の2点となります。
最後の回復期フェイズですが、基本的にはその名の通り筋肉が受けたダメージを回復させるためのフェイズになります。
トレーニングを一切休んでもいいのですが、そうすると再開した時のトレーニングに支障をきたすので、アクティブレストの一環ととらえて下さい。
ポイントは、とにかく筋肉を疲労するまで追い込まないこと。
フリーウェイトではなくマシンを使い、軽い重量で20回程度のみに留めておきましょう。
そしてこの回復期フェイズが終了したら、また最初の化学的刺激を狙ったフェイズへと戻り繰り返して行くのです。
非線形ピリオダイゼーションの組み方
それに対して非線形ピリオダイゼーションとはどのようなものかというと、その日の気分によって行うトレーニング方法を変えるというやり方です。
実際、トレーニング経験者を対象とした実験で、6週間「一定の負荷を与える組」と「重量を増やしつつ回数を減らす組」そして「毎回負荷と回数を変える組」に分けてトレーニングを実施したところ「毎回負荷と回数を変える組」の方が圧倒的に筋肥大をしたという結果もあります。
なので線形ピリオダイゼーションのやり方と狙う刺激の種類を学んだあとは、それを自由に組み合わせて気分でトレーニング方法を変えるというのも、筋肉にあたらな刺激を与えてマンネリを防ぐという意味では効果的だとも言えます。
さいごに
以上が筋トレ停滞期打破のためのポイントでした。
初心者でも上級者でも、必ず伸び悩む時期というのがやってきます。
そんな時は現在の自分の立ち位置を見直し、足りないものは何なのかを考える必要があります。
そういった時に、この記事の内容が参考になれば幸いです。