「筋トレとセロトニンの関係について教えて欲しい。うつ病対策にもなるって聞いたけど本当かな?」
今回はそんな疑問に答えるために、筋トレとセロトニンの関係ついて解説していきます。
結論から言うと、筋トレをしてもセロトニンの分泌量はそこまで増えません。
ただし、筋トレをすることで不安を取り除くことが出来るという研究結果は存在しますので、そういう意味ではうつ病やストレスに耐性をつけるという効果も期待できます。
なので以下より、セロトニンについてや、筋トレが精神に及ぼす効果などにも言及しながら詳しくみていきましょう。
筋トレするとセロトニンが分泌される?
筋トレをすると、精神を落ち着かせる働きをもつセロトニンが分泌されるという話をたまに耳にしますが、実はこれは正確な情報ではありません。
トレーニングによって分泌される神経伝達物質は、ノルアドレナリンやドーパミンといった興奮作用のある物質になります。
ただ、2017年や2018年に行われた研究によると、筋トレが不安を取り除き、うつ病の症状を緩和させる効果があることが報告されています。
ただし現段階では、因果関係があるらしいということまでは分かっているのですが、そのメカニズムまでは解明出来ていない状況です。
そういう意味では今後の研究いかんによっては、筋トレとセロトニンの関係が覆されるようなことがあるかもしれませんね。
セロトニンにはどんな働きがあるの?
ただ、こちらの記事を読まれている方はセロトニンの働きとその増やし方についても興味があると思いますので、ここからはその2点についても説明していきましょう。
まずは、セロトニンのはたらきに関してです。
セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質の1つです。
厚生労働省のe-ヘルスネットの記載によると、
脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをします。
他の神経伝達物質であるドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
セロトニン|e-ヘルスネットより引用
といった働きをもつとのことです。
なのでセロトニンが不足すると、精神のバランスが崩れて不安を感じやすくなったり、睡眠の質が低下したり、場合によってはうつ病などの病を引き起こすこともあります。
ちなみにセロトニンは体内ではホルモンとして働くこともあり、その際は消化器系の制御であったり、食欲を抑制する効果があることも知られています。
セロトニンはトリプトファンによって作られる
ちなみにそんなセロトニンですが、前駆体となる物質は必須アミノ酸(EAA)の1つであるトリプトファンになります。
必須アミノ酸とは、体内で作られることがないため、必ず外部から摂取する必要があるアミノ酸の事を指します。
>>やみくもにタンパク質を摂るだけでは意味がない!?必須アミノ酸について解説
実は体内のセロトニンは90%が腸内に存在し、残りの8%が血小板に、そして2%が脳内に存在しているのです。
そしてセロトニンは血液脳関門を通ることが出来ないので、そのままでは脳で使われることがありません。
しかしその前駆体であるトリプトファンは血液脳関門を通り抜け、脳にたどり着くことが出来ますので、このトリプトファンが脳内でセロトニンに代謝され、様々な効果をおよぼしているのです。
セロトニンを増やす方法
次に、セロトニンの増やし方についてです。
主な方法は3つあります。
- 日光を浴びる
- リズミカルな運動を行う
- サプリメントを摂取する
セロトニンの増やし方①:日光を浴びる
セロトニンを増やすための最も簡単で、かつ非常な有効な方法の1つがこれです。
セロトニンは体内の生体リズムとも深くかかわっていますので、目の網膜が太陽の光を浴びるだけで、セロトニン神経が活性化されることが分かっています。
逆に暗い部屋にずっと閉じこもっているとそれだけでセロトニンの分泌量が減ってしまい、どんどんと不安な感情が強くなっていってしまう可能性もあります。
セロトニンの増やし方②:リズミカルな運動を行う
ここでいうリズミカルな運動というのは、別にダンスなどの運動のみを指しているのではありません。
一定のテンポで繰り返し行うような運動全般が対象となります。
なのでウォーキングやジョギング、サイクリング、トレッドミル、低重量×高回数の筋トレなども該当します。
そういう意味では、筋トレのやり方によってはセロトニンを増やすということも十分可能性があります。
セロトニンの増やし方③:サプリメントの摂取
脳内におけるセロトニンの作用を期待する場合は、サプリメントで直接セロトニンを摂取しても意味がありません(腸内での働きを期待する場合は別ですが)。
先述の通り、セロトニンの状態では脳内には運ばれないからですね。
なのでサプリメントで摂取する場合はその前駆体であるトリプトファンを摂取すればよさそうなものですが、ここで1つ問題があります。
それは、高タンパク食を行っている場合トリプトファンの脳内への輸送が滞ってしまうという点です。
トリプトファンは血液脳関門を通過する際、バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・チロシン・メチオニンといった、他のアミノ酸と共通の輸送体によって運ばれます。
しかもトリプトファンは一般的な食品の中に含まれている量はそう多くはありませんので、相対的に運ばれる量自体も非常に少ないのです。
もちろんこれは、サプリメントでトリプトファンを摂取した場合も同様です。
なのでこの場合おすすめなのが、トリプトファンとセロトニンの中間体である5-HTP(5-ヒドロキシ-L-トリプトファン)をサプリメントで摂取するというやり方です。
トリプトファンはこの5-HTPの状態を経てセロトニンへと代謝されていくのですが、5-HTPもトリプトファン同様血液脳関門を突破することが可能なのです。
加えて5-HTPはアミノ酸ではなく、脳に運ばれる際に輸送体は必要としないので、摂取した量の約7割近くがセロトニンへと脳内で代謝されてくれます。
摂取量の目安は50mgを目途に摂取するようにしましょう。
あまり効果が感じられない場合は一回あたり100mgぐらいまで増やしてもOKです。
寝る前に摂取すると、睡眠も深くなるのでオススメですよ。
ちなみにトリプトファンではなく5-HTPを摂取するメリットはもう1つあります。
実はトリプトファンはセロトニン以外にも体内では様々な経路で代謝されるのですが、その中の1つにキヌレニン経路というものがあります。
このキヌレニン経路が過剰に働くと、精神病を引き起こす場合もあるとされており、トリプトファンの摂取が結果的にうつ病に繋がってしまう場合すらあり得ます。
なのでトリプトファンの自体の過剰摂取にも注意が必要ですね。
筋トレで不安を取り除こうと考える前に
以上、セロトニンのはたらきや増やし方について見てきました。
ただここで考えて貰いたいのが、そもそも筋トレで不安を取り除こうという考え方の是非についてです。
確かに最近はSNSやYoutubeなどで、筋トレが精神に与える好影響について語られることも多く、それ自体を否定するつもりは毛頭ありません。
ただ、筋トレは所詮ただの筋トレです。
筋トレをあたかも万病に効く特効薬のように表現する人もたまに見かけますが、それならスポーツ選手やボディビルダーの中に、精神的な病などを抱えている人なんていないはずですよね?
ですが現実はそうではありません。
一流サッカー選手のイニエスタですら、うつを抱えながらプレーをしていたと、イニエスタ本人もそう語っています。
つまり、筋トレに過剰な期待を抱くべきではないということです。
不安を抱えているのなら、適切な運動やサプリメンテーションはもちろん大切ですし、当ブログでも主にそういった情報を取り扱ってはいます。
ただ、不安の原因を取り除くことから目を背けてはいけません。
もしも今の職場の環境があなたの不安の原因なら、いっそ転職を考えるのも1つの手段ですよ。
さいごに
以上が筋トレとセロトニンについての解説でした。
筋トレが精神に与える影響についてはまだまだ研究の初期段階なので、分かっていないことも多いです。
ただ、適度な運動とそれに伴う適切な栄養摂取が体に悪影響をおよぼすとは考えにくいので、ぜひ皆さんも正しく楽しい筋トレライフを過ごしていきましょう。