「筋トレとサウナの関係を詳しく知りたい。サウナは筋肉にとってマイナス?それともプラス?」
今回はそんな疑問にお答えしていきます。
最近は巷でサウナーという言葉が生まれるくらい、男性を中心にサウナに足しげく通う人というのが増えてきていますね。
そんな中で生まれる「はたしてサウナは筋肉にとって良いのか悪いのか?」という疑問。
結論から言うと、筋トレ後にサウナで筋肉を温めることは科学的にも良い事であると言われています。
以下より様々なエビデンスも交えつつ、筋トレとサウナの関係について科学的にみていきましょう。
筋トレ後のサウナは筋肉にとって〇〇です
まずはこちらの答え合わせからしていきます。
正解は「筋トレ後のサウナは筋肉にとってプラスです」となります。
それは何故でしょうか?
主な理由は2つあります。
- 筋トレ後に筋肉を冷やすと筋肥大が阻害されるから
- 筋肉は温められるとHSP(ヒートショックプロテイン)を作り出すから
サウナが筋トレにとってプラスな理由①:筋肉は冷やされると筋肥大が阻害される
まずはオーストラリアで行われたこちらの実験をご紹介しましょう。
この実験では24名の男性に12週間にわたって筋トレを行ってもらい、トレーニング後のケアとして水風呂に入るグループとアクティブリカバリ(軽い運動)を行うグループとに半分ずつ分けました。
結果としては、筋肉の等張力性収縮の力・速筋繊維の断面積・筋細胞核の増加数のすべてにおいて、水風呂に入ったグループの方が劣るという結果が得られました。
他にも2019年の12月に行われたこちらの最近の研究では、2週間にわたる筋トレ後の筋冷却の影響を観察することによって、そもそも筋肉へのタンパク質の取り込み自体が阻害されており、その上で筋合成シグナルの活性を低下させている可能性を示唆しています。
以上の研究結果からも、現時点では、筋トレによる筋肥大の効果を最大化したい場合は筋肉を冷やすべきではないという考え方が正しいです。
ただし、運動後の冷却は、全身性の持久運動による筋損傷からの回復には一定の効果があることはこちらの研究からも知られているので、試合後のスポーツ選手にとっては一概にアイシングが悪であるとは言えませんが。
そして、これらの事実からも逆を言えば、筋トレ後にサウナで筋肉を温めることは、それだけでも筋肉にとってプラスの影響を及ぼすとも言えます。
サウナが筋トレにとってプラスな理由②:HSP(ヒートショックプロテイン)の生成
筋トレ後のサウナが筋肉にとってプラスである科学的根拠はこれだけではありません。
2018年に日本で行われたこちらの研究において、マウスの筋芽細胞を42度で30分以上温めることによって、タンパク質の合成経路が活性化するという結果が得られました。
この結果の背景には、筋肉が熱に晒されることによって生成される、HSP(ヒートショックプロテイン)の存在が大きく関わっている事が推測されます。
HSPとは筋肉が熱(ストレス)に晒された際に生成される物質であり、生体防御作用をもち、細胞をストレスから守るはたらきや、分子シャペロン効果というタンパク質の介添え役を担う事で、タンパク質の合成・運搬を助けるはたらきを持つことが知られています。
実際にマウスを41度の部屋に1日1時間閉じ込め、1週間後にそのマウスを測定したところHSPが増加していることが確かめられたという研究結果も存在しています。
まだまだマウスモデルなのでエビデンスレベルとしては低いのですが、人間においてもHSPの存在とそのはたらき自体は認められているので、これもまたサウナが筋肉にとってプラスであるエビデンスの1つであると言えますね。
サウナの後の水風呂が筋肉におよぼす影響
先ほど、筋トレ後に筋肉を冷やすことはあまり良くないというお話を少ししましたが、ではサウナとセットで行われることの多い水風呂は、筋肉にとってどのような影響をおよぼすのでしょうか。
サウナに入ったあとに水風呂に入って、体が冷えたらまたサウナに入るを繰り返すというこの行為は交互浴という回復療法にあたり、古くからアスリートの間では取り入れられてきた手法になります。
そして交互浴には一定の回復効果があるのは間違いありませんが、血流の促進効果でいうと、サウナ単独や水風呂単独に比べて低いことがこちらの研究によって確認されています。
筋肥大の面からいうと、筋肉に栄養を運ぶという意味合いで血流の促進は非常に重要となってきますので、筋肥大効果のみを追求する場合は筋トレ後のサウナはあまり効果的ではないと言えます。
ただし交互浴には、自律神経を整えるというもう1つの効果が存在しており、交感神経が優位になりがちで自律神経を崩しやすいトレーニーにとっては、必ずしもマイナスであるとは言えません。
なのでサウナの後に水風呂に入るかどうかはその人の好みによって選択すれば良いでしょう。
サウナのメリットとエビデンス
ここまででサウナと筋トレの関係性については十分理解出来たと思いますので、最後に改めてサウナ自体にどのようなメリットが存在するのかをエビデンスを交えて紹介していきます。
科学的にある程度証明されたサウナの効果にはこのようなものが存在します。
- 血圧の低下
- 総コレステロール値の変化
- コルチゾールの低下と成長ホルモン、テストステロンの濃度上昇
- 風邪の罹患率の低下
サウナのメリット①:血圧の低下
サウナに入るとイメージ的には血圧が上昇しそうですが、7年にわたって対象者を追跡調査したこちらの研究によると、週に1回以上サウナに入る人はそうでない人に比べて高血圧になるリスクが低下するという結果が得られています。
基本的にはサウナに入る頻度が上がればあがるほど、高血圧なる可能性が低下するようです。
このメカニズムはまだ完ぺきには解明されてはいませんが、同時に心血管イベントのリスクも低下することからも、血管の働きを正常化させるような効果がサウナにはありそうです。
サウナのメリット②:総コレステロール値の変化
サウナは発汗を促すことからも、ダイエットに良い効果をもたらすイメージが強いですが、実はそれだけではないのです。
16人の若い男性を対象に行ったこちらの実験によると、1~2日おきにサウナに入ることによって3週間が経過した時点で総コレステロール値とLDLコレステロール値の有意な減少が確認されました。
LDLコレステロールは体に悪影響をおよぼす過酸化脂質になりやすい性質を持つコレステロールなので、体内に過剰に存在するのはあまり良くないことであるとされています。
つまりサウナは体内の脂質プロファイルを正常化させることによって、体をより健康的な状態に保つ働きももっているということです。
サウナのメリット③:コルチゾールの低下と成長ホルモン、テストステロンの濃度上昇
ストレスホルモンの1種であるコルチゾールは、大量に分泌されると筋分解を促進し、筋肉がつきにくい体の状態を作り出してしまいます。
それに対して成長ホルモンとテストステロンはそれぞれ、体脂肪の燃焼促進と筋合成シグナルの活性化を通してボディメイクにプラスの影響を与えることが知られています。
サウナに入っている最中の血中ホルモンレベルを調査したこちらの研究によると、サウナ中はコルチゾールの分泌量が低下して、成長ホルモンとテストステロン濃度が上昇する現象が確認されているのです。
サウナのメリット④:風邪の罹患率の低下
こちらの25人のボランティアを対象とした実験によると、6か月間の経過観察中、定期的にサウナに入った組の方が風邪にかかる割合が有意に少なかったという結果が出ています。
他にも週に1回以上サウナに入る人はそうでない人に比べて、体内の炎症や酸化レベルが有意に低いという研究も存在することから、定期的なサウナ浴が免疫力を向上させるというのは間違いなさそうです。
さいごに
以上が筋トレとサウナの関係についての解説でした。
ちなみにですが、単純に筋肉痛からの回復効果だけを狙う場合は、サウナよりも適度なマッサージの方が効果的です。
どちらにも共通して言えるのは、筋肉痛の原因の1つとされている疲労物質の除去を促進させることが、筋肉痛からの回復を早めるには最適な方法であるという点です。
なのでサウナ+マッサージという健康ランドさながらの手法こそが、筋肉痛のケアという観点で言えば最もベストな選択肢であるということになりますので、なかなか疲労が抜けない方はリフレッシュもかねてぜひ試してみて下さいね。